「高い地区」という名を持つバイロ・アルトは、その名の通り丘の上にある。
坂があまりにも急なのでケーブルカーのグロリア線で登ろうと計画していたのだが、行ってみると始点から終点が見える距離。気まぐれで、歩きだしてしまった。
急な坂道を登り、世界でもっとも高価な教会と言われる「サン・ロケ教会」を観てからゆるやかに下り、「カルモ教会」へと向かった。
「カルモ教会」は、天井のない教会だ。
1755年の大地震で倒壊した石造りの教会跡で、天井はなく、一部の壁と石柱が残っている。石造りの建物の強固さと地震被害の大きさを物語っているかのようだ。
アーチ型に残った石柱の合間から、抜けるような青空が見えた。
それが不完全だからか、余計に人の手で作ったものなのだと感じさせられる。
教会跡を保存したそのなかには、考古学博物館があり、紀元前の遺跡などが展示されていた。発掘された矢じりや石器。そして、土偶のような人の形をしたもの。人型のものをじっと見ると、日本で発掘された土偶と雰囲気がとても似ていて驚いた。
川上弘美の短編集『神様』に出てくる一節を思い出す。
「熊の神様はね、熊に似たものですよ」
くまは少しずつ目を閉じながら答えた。
なるほど。
「人の神様は人に似たものでしょう」
宗教を持たないわたしだから思うことかも知れないが、人が思い描く神様は人に似たものであり、人は大昔から人の形をしたものを作り、祈っていたのだ。
博物館の外へ出ると、アーチ型の石柱のなかに広がる青空に、飛行機雲が描かれていくのが見えた。人の形をした神様に祈るのも、飛行機を信じられないほど空高く飛ばすのも、同じ人なのだとただ空を見上げていた。
高台にある「サン・ロケ教会」です。
世界一高価なと言われるのは、内装に金が施され、いく種類もの宝石が散りばめられているから。
前の広場には、金? それとも紙幣? を持ったおじさんの像が。
影でちょっと遊んでみました。
「カルモ教会」跡です。屋根は崩れ、石柱が残っています。
空が見えるのは、天井がないからです。
教会のなかには、首輪をつけた猫さんがお昼寝中でした。
すぐ近くに「サンタ・ジュスタのエレベーター」があります。その展望台からは、向こうに「サン・ジョルジュ城」が見えます。
すぐ下には「ロシオ広場」の波の模様の石畳も見えました。
百年以上前からリスボン市民の足として活躍している「サンタ・ジュスタのエレベーター」です。坂を上ったり下りたり、たいへんだもんね。
乗ってる時間は1~2分ほど。降りて見上げた姿です。エッフェル塔を設計したエッフェルさんの弟子の作品だそうです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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