パリ結婚式事情 1
〈郊外の自然のなかにたたずむレストランでの結婚式が、スタンダードらしい〉
イザベルとミカエルの結婚式も、パリ郊外で行われた。
「式場のホームページだと、電車もバスもないってかいてあるよ」
「うーん。タクシーで行くしかないのかな?」
前日、娘と落ち合って相談すると、彼女はこともなげに言う。
「RERのA線の終点だって言ってたよ。電車で行けるんじゃない?」
「地図見たらそこから遠いし、その田舎の終点駅からタクシーに乗れるかが、不安なんだけど。
あと帰りもタクシー呼べるのかな?」
「帰りは誰かに送ってもらうか、Uberで呼べるみたいだよ」
「ほんまかいな」
日本語とフランス語のあいだには、太くて長い英語の川が流れている。娘とイザベルは英語でコミュニケーションをとっているようだが、ちゃんと連絡がとれているのかが不安だった。
パリ結婚式事情 2
〈お祝いはご祝儀ではなく、プレゼントで〉
考えた末、赤と青の切子ガラスにふたりのネームを彫ったものにした。
娘は、日本製の布巾にしたらしい。
パリ結婚式事情 3
〈男性出席者は、タキシードで〉
男性は、正式にはタキシードを着るらしい。しかし夫が持っているはずもなく、明るめの紺のスーツにブルーのシャツ、ピンクのネクタイを合わせた。
実際にはタキシードを着ている男性はなく、みなスーツ姿。ムリしてタキシード買ったりしなくてよかったねと、顔を見合わせた。
ちなみに黒のスーツはダメらしい。日本で着る礼服を着ていたとしたらちょっと浮いてしまう雰囲気だった。
さて。なんとかぶじに式場に到着した。
日本で言えば、古民家を改装したレストランという感じだろうか。
「わ、すてき!」
「干し草の匂いがする!」
ドキドキしながらふたりの入場を待ったのだったが、事前情報はまだある。
パリの結婚式事情 4
〈結婚式は、日をまたいで夜中じゅう続く〉
式場に向かう車窓から撮った風景です。雲の形さえ違う気がする。
セーヌ川を渡って、どんどんのどかになっていきます。
RERのA線終点のポワシー駅前です。待ち合わせがうまくいかないー。
ワインカーブをリノベーションした会場です。
式のあと、シャンパンで立食パーティの会場はウッドデッキとお庭。
芝生の庭で、青空の下。このベンチにふたりが座っての結婚式でした。
当然ですが、ほとんどがフランス人。青いドレスを着たのが娘です。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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