5年前に2週間、我が家にステイしたイザベルの結婚式に出席するためパリへと向かった。だが、ル・マン24時間レース開催時期と重なったためか飛行機がとれず、ブリュッセルを経由することになった。せっかく初めて降り立つ街なので、考えた末、1泊してふらふら歩いてから超特急タリスに乗ろうと計画した。
タンタンが生まれた国、ベルギー。その首都ブリュッセルは壁画アートの街だった。ふらりと歩くだけで、そこここの建物の壁面に様々な絵が描かれているのを見ることができ、見つけるたびにうれしくなった。ちょっとした宝探しをしているような気分だ。
超特急タリスが発着する南駅から、有名な小便小僧がいる中心地付近はまでは15分ほど歩く。そのあいだにも壁画を見つけてはうきうきと写真に収めた。
目的地ではないので、のんびりとしたお散歩だ。
中心にあるグラン・プラスで軽い夕食をとり、帰りも同じ道を辿るようにして歩いていく。だが同じだと思った道は、同じではなかった。
同じ道を歩いているというのに、次々と壁画を発見したのだ。
「あ、ここにもある!」
「おー、タンタンだ」
行きは死角になっていた壁面が、帰りには正面から視覚に入ってくる。
当然のことなのだが、それが不思議でおもしろかった。
「いつもこうして、目に入ってくるものだけ見て歩いてるけど、目に入ってこない部分って、きっといっぱいあるんだよな」
ブリュッセルの壁画たちが、笑いながら語りかけてきた。
新しい道を歩くとき、ふと振り返ってみるのもいいかも知れない。
壁画アートと言えど、侮れないお洒落さです。
絵のなかに街の建物が描かれているものも、多くありました。
街の本屋さんのディスプレイも、凝っていました。あかずきんちゃんの狼。
これはなんと、ホテルのロビーです。壁いっぱいに描かれていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。