地味に、多治見に来ている。
というのは駄洒落だが、夫が大学時代の友人たちと台湾旅行に行く間のひとり旅だから、地味と言ってもいいだろう。ちなみに26歳の娘は今、ミャンマーをひとり旅している。多治見はやはり、地味と言っていいだろう。
「お父さんが台湾に行ってる間に、どっか行かない?」
と、娘を誘ったのだが、海外に一週間行くからと断られたのだ。
ふらふら焼き物でも観て歩くかと、調べるとなんと『多治見陶器祭り』が開催される日だった。多治見がわたしを呼んでいる。もう行くしかない。
で、地味に多治見に来ているというわけだ。多治見は雨、地味に小雨だった。
1日目は、お祭り前日。せっかくだから窯元見学に行った。
『水月窯(すいげつがま)』という名に魅かれ、JR多治見駅からバスに乗った。電話をしておいたので、陶芸家さんおふたりが美濃焼ができるまでを説明しながら案内してくださった。
「これは、手ろくろと言って、機械ではなく手で回すんですよ」
「手ろくろのいいところは、どういうところなんですか?」
「電気代が、かからないところですかね。ははは」
「それ、言ったら怒られるよ。ははは」
多治見市無形文化財だというのに、何とも気さくな方々で和気藹々とした雰囲気のなか、登り窯も見せてもらった。900℃まで温度を上げて50時間も焼くそうだ。そのうち4~5時間は、薪を足し続けなくてはならない。繊細とも思える陶芸の力仕事の部分を垣間見た気がした。
「ここの特徴は、土づくりから成形、絵付け、登り窯で焼くまで、機械に一切頼らずやってるってことかな」
スタンダードな型は、高杯の白い湯飲み茶碗で梅の絵がいくつか散りばめられている。それは筆ではなく指でスタンプを押すように描いていくのだそうだ。
「よくね、ハンコを使ってるんじゃないかって思われるんですよ。大量生産したものに、目が慣れちゃってるんでしょうねえ」
「たしかに、そうかも知れませんね」
ごつごつした手作り然とした器なら手作りだとひと目でわかるが、同じデザイン同じ大きさのすっきりとした器は、人の手だけで作ったようには思えなくなっている。わたしにも、たぶんそういう感覚がある。そういう感覚に慣れると、ほんとうのことがどんどん見えにくくなっていく。
「陶器祭りを見る前に、そういう感覚があるんだって教えてもらってよかった」
同じ名前の水月窯さんに感謝して、ゆっくりと林のなかの道を歩き出した。
林を抜けると、開けた場所にありました。見学無料。
手ろくろ。穴に棒を突っ込んで回し、勢いをつけるそうです。
こちらは普通の横穴式ひとつのみの窯です。薪は赤松。火力が出るそうです。
焼く前の乾燥させた状態の陶器が、なかに外にずらりと並んでいました。
おはようございます。
多治見陶器祭なんて、私は惹かれます~。
全然、地味など・・・とても、贅沢ですよ。気持ちが贅沢になりますね。
美濃焼・瀬戸焼など、愛知・岐阜の方にもたくさん窯元がありそうですよね。
東の窯元は、信楽までしか行ったことがなく、一度訪れてみたいなと思っては
いるのですが・・・・。
何か、逸品を求められましたか。
しばらく、ご家族世界中に解散ですね・・・。
それぞれのお土産話。楽しみですね♪
さえさん、ひとり旅ステキ~
特に焼き物と聞いて、よけいいいな~
この歳になってひとりで行動する事の範囲が広がりはしているけれど、
ひとり旅っていうのはまだ経験ないんです。
でもあこがれてます。
自由に気の向くままにゆったりと好きな所に行く・・・
車ですか?電車旅?
でも行くのなら今で、これ以上年とってきてからでは、怪しまれる?絵にならない?心配される?
はたまた周りに迷惑をかけかねない?
そう考えると、私のひとり旅は、日帰りか、おひとり様限定のツアーとかになりそうです・・・
行動的なさえさん、かっこいいです~
ユミさん
ゆっくり焼き物を見て歩くのは、ひとり旅が一番かもしれません♩
陶器祭りだったこともあって、ランチに入ったお店でも、ひとりの女性率高かったです!
陶器祭りでひとり旅は、けっこう普通っぽいんですね。
電車で行きました。乗り換え1回で、急行を使えば3時間。窯元まで足を伸ばしてとか考えてレンタカー借りようか思案しましたがバスとタクシーで済ませました。リーズナブルな旅になったと思います。
72歳の友人が、去年ひとりでバリに行っていました。かっこいいなと思いました~
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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