さて。ブリュッセルには、「ブリュッセルの最長老市民」とみなに親しまれるジュリアンくんがいる。ブリュッセルのシンボル、小便小僧だ。
ブリュッセルを包囲した敵軍が城壁を爆破しようとした際、少年ジュリアンが導火線に小便をかけて火を消し、町を救ったという話が語り継がれているらしい。御伽噺的な伝説である。
街なかにたたずむその小さな銅像は、常に誰かしら観光客の視線を浴び、カメラを向けられている。しかし、いかんせん小さすぎる。身長61㎝と言えば、大きめの申請時の大きさ。男の子というよりはお人形である。これがそうなの? と一瞥して立ち去る人も多く、世界3大がっかり(あと2つは、シンガポールのマーライオンとコペンハーゲンの人魚の像)に数えられてもいるそうだ。。可哀想だが一目見られれば、まあいいかという存在。というのが事前に調べた情報だった。
だがその姿を見たとき、予想に反してハッとさせられた。きれいだったのだ。
愛嬌があり、何より堂々としている。たぶん、見つめられ続けてきた者だけが持つオーラのようなものを持っていて、それを感じたのだろう。
それでもしばらく見つめ、写真を撮り、その場を後にした。
「服、着てなかったね」
夫は残念そうに言った。
「イベントがあるときだけ、着るらしいよ」
650着もの衣装を持つ彼の、晴れ姿もちょっと見てみたいような気がした。
小便小僧のジュリアンくんです。輝いていました。
建物は改装中でしたが、人だかりでなかなか近づけません。
グランプラスの広場にある王の家(ブリュッセル市立博物館)には、ジュリアンくんの衣装が展示されているそうです。
そのすぐ横でベルギービールを飲みました。阿部寛似のウェイターさんが「こんにちは、阿部寛です」と笑顔で言うのが可笑しかった!
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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