旅先で読み終えた文庫本を、宿に置いてくる。
憧れていることのひとつだ。
先月旅してきたポルトガルはリスボンで泊まったホテルにも、日本の小説やガイドブック、自己啓発本などが何冊かあった。
「誰かが、置いていったんだね」
手にとりながら、夫と話した。
むかし読んだ小説に、世界中をあちこち旅している男性が、あるときまったく違う国で自分が旅の途中に置いていった本と出会う、というストーリーがあった。
あった気がする。というのは、どの本なのかすっかり忘れてしまったからだ。
そんなことは起こらないだろうけれど、人間が旅するかのように本も旅しているなんて考えるだけでワクワクする。
ちょうど行きの飛行機で読み終えたばかりの、文庫本を持っていた。
「置いていこうかな」
ほんの少し逡巡し、やめた。いつか読み返すであろう本だと知っていたからだ。知っていながら「憧れ」を叶えるためだけに置いていくのはフェアじゃない。
ところであの、忘れてしまった小説は(いや、エッセイだったのかも)、誰の何という本だったのだろうか。
ホテルのライブラリー。朝食会場です。
野菜と卵とチーズとパンの朝食でした。
本棚には、こんな感じで日本語の本も集めてありました。たぶんいろいろな国の本があるんだろうなあ。
むかしこのホテルは床屋さんだったらしく、当時の様子を展示されている部屋が。
部屋はゆったりめ。濃いピンクが洒落ている部屋でした。
部屋には、自由にポートワインが飲めるようにと置いてありました。
手前の『影踏み』がわたしの文庫本。あとは部屋に置いてあったものです。
「起こさないでください」が「シー・・・」になっていました。
この『Hotel Britania(ホテルブリタニア)』は『レトロな旅時間ポルトガルへ』に載っていました。リスボンで宿泊するときにはおススメのホテルです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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