青空の下での結婚式は、2時間ほど行われた。
牧師さんの結婚するふたりへの大切なお話、聖書の言葉を贈る家族や友人、指輪の交換、新郎から新婦に贈る言葉。
もちろん、すべてフランス語だ。ときどき、娘の隣りに座った女性が英語で通訳してくれて、日本語でわたしのところへ回ってきた。
言葉はわからなくても、伝わってくるものは多く、イザベルとミカエルの表情や仕草を見ているだけで胸に深く落ちるものがあった。
ふたりは、たがいが隣りにいることの奇跡を、心に、そして身体じゅうに感じていた。それが参列したすべての人の瞳に映り、胸の奥底に落ちていった。人が発する熱。体温とは別の心が発するもの。熱を持った小さく光るものの存在を、わたしはすっかり忘れていて、それをハッとするくらい久しぶりに見た気がした。
生きていて目にするものは、現実にそこにあるものだけではない。科学では説明のつかないものが、日々のなかそこここにあって、それは目に見えるものに紛れてしまい見失いがちだ。けれどじつはそれは確かに存在するもので、見ようとする者だけが不意に垣間見るこことができるのではないか。
結婚式の間じゅう、そんなことを考えていた。
パリ結婚式事情 5
〈結婚式は、結婚するふたりが参列する家族や友人のために開くものである〉
これを聞いていたから、ふたりを祝福する時間を心から楽しめたのだった。
干し草の匂いがする緑いっぱいの結婚式場です。
立食パーティの会場には、イザベルが描いたふたりの絵が飾ってありました。
夫とふたりで、しみじみと乾杯。
ラストはダンスパーティ。わたしたちも一緒に踊りました。楽しかった!帰りはイザベルのお父さんがホテルまで送ってくれました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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