図書館で借りた、西村玲子のイラストエッセイ集『いつも、おしゃれで。』を紹介しよう。
Ⅰ「着こなしで豊かに」には、服装計画を立て、Instagramでの出会いに刺激を受け、季節を先取りし、アクセサリーとのマッチングを考え、映画にファッションを学ぶ。
「素敵な後ろ姿」
後ろ姿が素敵な人を時々見かける。大抵すっきりした人が多い。今回も駅に向かう道で一人。シンプルで歩き方が美しい。ブルーのジャケットに青みが入ったグレーのスカート、肩にかけたバッグが同じブルー系。溶け込んで美しいのだ。
こんなふうに見られていること、あるのだろうかと思う。いや”素敵な後ろ姿”だからの凝視なのだろう。見られていることを前提に、ばっちりキメて出かけてみるのもいいかも。
Ⅱ「日常をていねいに」では、目指すべき年配のご婦人を見つけ、藍色に癒やされ、病気をして普段の生活の大切さを知り、処分できないコートを眺め、部屋着を考える。
「おしゃれ人名簿」
電車の中で素敵な年配の方と、若いおしゃれな女性が並んで座っていらした。娘に「ね、あの人のコート上等そうね」、娘は「上品な修道女のような方ね。寝るときは絹のパジャマを着ていそうね」。
知らない女性たちに空想を膨らませるふたり。
左さん(年配の女性)は、朝のコーヒーは夫が淹れ、カップはエレガントなアンティーク。
右子さん(若い女性)は、もちろんマグカップでなみなみと。
それが、洒落たイラストになっていて楽しい。
ゆったりと珈琲を飲みながら、捲りたい本だ。
おしゃれや暮らしを楽しむヒントが満載で、だからといってすぐに実践しようという雰囲気ではない。何ヶ月か経って、あ、そういえばと思い出してなんかやってみたくなるようなタイプの本である。
西村怜子さんは、4年ほど前に78歳で亡くなっていた。
若い頃、彼女の著書や雑誌のイラストに親しんだわたしには、心の奥のひきだしにそっとしまった光るものを見ているような気がした。
新しいスマートフォンと撮った表紙。
バッグの薄い色がブルーのジャケットと合っている「素敵な後ろ姿」
バイオレットと茄子紺を合わせたEさん。
夜は絹のパジャマを着る、左さん。
パジャマはこだわりのスエットという右子さん。こういう罪のない空想って、楽しいですよね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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