新緑の日本を出発して、ピントの街に足を踏み入れたら、すでに万緑だった。
「万緑」は、三夏の植物の季語。
木々の緑が深まり、生命力に溢れる様子。(中略)中村草田男が用い、一般化した。
『俳句歳時記・夏』より。
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
この句によって「万緑」は季語として使われるようになったそうだ。
アパート近くのエヒード公園の万緑を、ゆっくりと見上げた。
歳時記にある「生命力」。もちろん、そんな木々のパワーも感じたが、もっと優しい、緩やかな安らぎのようなものが降ってくる。いつもと違う感覚に、足をとめた。
国というより、その土地、場所によって、「万緑」を受けとる感覚も違ってくる。
何度も歩いたエヒード公園だが、5月は初めてだ。
万緑を思いっきり吸い込むかのように、深く深く深呼吸する。
今回の旅のわたしの役割としては、夫の個展のサポートや生活管理などが中心になるが、一日一句、俳句を詠もうと決めてきた。
単純計算をすれば、帰る頃には30句詠めているはずだが、どうなることやら。

万緑のエヒード公園。アパートから徒歩1分の場所にあります。

木々を見上げて。

何の木だろう。調べてもわかりませんでした。散った花が枯れて木々の下に敷きつめられていました。
万緑のひとつの幹へ近づきぬ 櫻井博道

数え切れないほどのシジュウカラが、飛びまわっていました。「四十雀」も、三夏の季語です。
四十雀つれわたりつつなきにけり 原石鼎
まさに、こんな感じでした。

噴水沿いの散歩道。夫はよくここで写真を撮っていました。
万緑やどの道をどう行かうとも 長谷川櫂

季語に「春の水」「秋の水」はあるけど、「夏の水」は季語じゃないんだよね。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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