何度もかいてきたかと思えば、一度も調べていなかった。
季語「春の山」だ。同じく春の山の季語「山笑ふ」を注目してきたせいだろうか。
【春の山】雪が解け、木々が芽吹く春の山は生命感に満ちている。
【山笑ふ】春の山の明るい感じをいう。
『俳句歳時記・春』より。
これまで調べてきた感覚では、「春の山」は、明るくのびやかに悠々とどっしりと構えている春の山を。
「山笑ふ」は、草木は芽吹き、鳥や動物たちは恋の季節に浮き立っている。そんな動植物を抱え笑っている擬人化した春の山をイメージしてきた。
寝ころぶや手まり程でも春の山 一茶
寝転んで見る山は、小さい。手鞠ほどに見える。そんな長閑なシーンを想像しつつ、手鞠の鮮やかに織りなす糸をも思い浮かべた。
骰子(さいころ)の一の目赤し春の山 波多野爽波
取り合わせの妙を感じる句。赤い色に色彩豊かな春の山を重ねているのか、一歩からスタートする双六をイメージしているのか。おもしろい。しかし、難解だ。
絵巻もの拡げゆく如春の山 星野立子
美しい句。こちらは、読んだ途端に映像が見えてくる。やわらかな色彩の絵巻物に違いない。
余生とは歩くことらし山笑ふ 清水甚吉
実感している。歩くこと、大切だ。動植物だけでなく、歩き登る人間をも腹に抱え、山々はくすぐったそうに笑っている。
山笑ふ胎動ときにへその裏 仙田洋子
「胎動ときにへその裏」は、経験だろうか。わたしにもその経験はある。山々で生まれる動植物たちの胎動を感じた。
逆光に山笑ひつつ暮れなずむ 佐藤春夫
穏やかでホッとする句。我が家から見ると、「逆光に暮れなずむ」のは、南アルプス連峰だ。その姿が、風景が、ゆっくりと浮かんだ。
俳句の擬人化は難しく、初心者は失敗しがちだ。それでも季語「山笑ふ」で、擬人化した生き生きと明るい春の山を詠んでみたいものだと眺めている。

朝、定点観測地点から撮った八ヶ岳連峰。

目にする緑が、どんどん広がってきましたね。

お昼。リビングから見た八ヶ岳。

それでもまだ雪が残っていました。

夕刻、西側のベランダから望む八ヶ岳。

雪は解けたり、また積もったりしています。
絵巻もの拡げゆく如春の山 星野立子
星野立子さんのこの句が見事ですね。
我が家から見える対岸の山も淡い絵巻物に見えます。
うっすらと桃色の山桜と気の早い新緑でパステルカラーの絵巻物みたいです。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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