去年に比べると、秋刀魚の値が下がっている。落ちついている、という感じか。1尾100円で買えた頃はもう戻ってこないのだろう。
新秋刀魚が出回るこの季節。もう何度か塩焼きにした。
「秋刀魚」は、秋の動物の季語。西日本では「さいら」と呼ぶ地域もあるらしく傍題になっている。
火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり 秋元不死男
大げさとも思える「火だるま」に、皮の焦げた秋刀魚の香ばしい匂いが漂う。「妻が食はせけり」にユーモアと妻に対する甘えを感じる句。
氷塊の中から秋刀魚抜きにけり 広渡敬雄
「刀」という字が入った秋刀魚。氷の塊のなかで直立不動で銀色に光る様が、読みとれる。
焼いた秋刀魚。焼く前の秋刀魚。どこの家庭の食卓にも上がる親しみ深い海産魚の句には、庶民的な味わいの句が多いように感じた。
秋刀魚に欠かせない「酢橘(すだち)」は、秋の植物の季語。「かぼす」などが傍題。
夕風や箸のはじめの酢橘の香 服部嵐翠
「夕風」と「酢橘の香」が爽やか。たしかに酢橘は、搾った指先や箸の先からも香る。香の存在感の大きさを詠んだ句。
眉寄せてかぼす絞るもうつくしく 三島広志
これは、女性のことだろう。妻だろうか。食卓でともに焼き魚などを食べている様子が想像できるから、妻でなくとも親しい女性だろう。それをかかずに映像を映し出す技のあるところに惹かれた。
食卓の句は、いいな。
ただそれだけで、ぬくもりがあり、ユーモアとペーソスが漂う。
夫婦ふたりなので、たいてい2尾パック。上の秋刀魚の方が、どのパックも美味しそうに見える(なぜ?)ので、選ぶとき迷います。
炭火で焼く秋刀魚は格別です。
もちろん普段は、キッチンのガスコンロ魚焼きで焼きます。旬の秋刀魚は格別です。
秋刀魚の写真を撮るのは、難しい。
奮発して購入した酢橘。野菜も柑橘類も値が上がり、いちいち迷います。
☆『地球の歩き方』山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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