きのう午前中から降り始めた雪は、今シーズン初めて積雪となった。
家の周りを窓から写真に撮ると、景色はモノクローム。風景が一変するおもしろさは、何度見ても新鮮だった。
「雪」は、冬の天文の季語。
傍題は多い。「六花(むつのはなorりくくわ)」「粉雪」「大雪」「深雪」「粉雪」「細雪」「小米雪(こごめゆき)」「新雪」「根雪」「飛雪」「雪明り」「暮雪」「雪晴」「深雪晴」など。
降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏
電気ではなくランプの灯りで暮らしていた頃、雪に閉じ込められそうな夜に、大切な灯がともるよう磨く姿を詠んだといわれている句だ。ランプの灯の大切さを「玉のごとくに」と表現したのだろうか。しんしんと降りしきる雪と暖かな部屋の情景が浮かぶ。
雪の日暮れはいくたびも読む文のごとし 飯田龍太
「雪の日暮れ」を「いくたびも読む文」(繰り返し読む手紙)に例えた句。何度も何度も降り積もる風景を眺めてしまうということか。
是がまあつひの栖(すみか)か雪五尺 小林一茶
一茶50歳のとき、永住すると決めた信濃国柏原(長野県信濃町)を詠んだ句。5尺(1.5m)も雪が積もる場所に決めてしまったかという感嘆が詠まれているという。
最も知られている「雪」の句は、これだろう。
降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男
降りしきる雪にふと時を忘れ、今が明治時代であるかのような気持ちになっていたが、不意に現実に返り、ああ、明治は遠くなってしまったのだとしみじみ痛感したという句。草田男31歳。着物ではなく外套を着た小学生たちに、時代の移ろいを強く感じ、その衝撃を詠んだそうだ。
雪に感じるものも、詠み手それぞれ。
かくいうわたしは、雪の結晶を表す傍題「むつのはな」に心惹かれ、なにか詠みたいものだなあと降りしきる雪を眺めていた。
1階、リビングの窓から。
見下ろすと堰沿いの道。
2階のベランダ越しに、夫が整備している森。
なにもかも、真っ白。モノクロームの世界です。
軽トラと薪小屋。積んだ薪にも積もっていました。
午後3時すぎのウッドデッキ。テーブルを見ると、10㎝くらいかなと指針になります。
夕方5時頃。ランプじゃないけど、薪ストーブの火が蛇笏の句を連想させる雰囲気。
窓いっぱいのリビング。寒いのですぐにカーテンを閉めました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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