図書館で、川上弘美の句集を見つけた。
1994年から2009年までに詠んだ句が、220句収められている。
最初のページの句(30年ほどまえの句になるが)から、いかにも川上弘美だ。
はっきりしない人ね茄子投げるわよ
季語は「茄子」だろう。夏、晩夏の季語である。
俳句って、なんて自由。そう思わずにはいられない。
好きだった句。
恋ふ人を忘れるつもり夜濯ぐ
初めて知る言葉「夜濯(よすすぎ)」は、晩夏の季語。
夏の夜に洗濯すること。その日の汗にまみれた衣類を夜風が立ってから洗濯して干しても、翌朝にはもう乾いてしまう。
「恋ふ人を忘れるつもり」が季語に寄り添う雰囲気が好きなのだと思う。
ほかに、反転したような感覚が魅力的な句も印象的だった。
目を入れて達磨淋しき日永かな
楽しさは湯豆腐に浮く豆腐くづ
ぎやうさんの蝶にたかられ重し重し
「日永(ひなが)」「蝶」は、春の季語。「湯豆腐」は、冬の季語だ。
ほかに、好きだった句。
膝たてて膝の匂ひや冬深む
行秋(ゆくあき)のうすく反りたるオブラート
はるうれひ乳房はすこしお湯に浮く
あとがき「俳句を、つくってみませんか。」には、こうある。
俳句ねえ。でも俳句って、なんだか古くさい、昔のものなんじゃないの。蛙(かわず)がどうしたとか枯野がどうしたとか。
そんな印象を持っていた著者は、覗いてみたネットの句会に驚いた。
あるものは「俳句」っぽく、あるものは短い詩のように、あるものは見たこともない不思議な言葉のつらなりをつくり出して、思いっきりのびのびと自由に句会を楽しんでいるのでした。
ちなみに、タイトルになった句は、こちら。
徹頭徹尾機嫌のいい犬さくらさう
この句もそうだが、理解できない句も多々あった。
表紙だけ見ると小説かなと思うけれど、背表紙に「句集 機嫌のいい犬」とありました。
季語「夜濯」の引用は『俳句歳時記・夏』から。
藤田湘子の『20週俳句入門』も、読み始めました。
先の読んだ『実作俳句入門』より先に『20週俳句入門』を読むべきだったようです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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