手話教室で話題になっていたドラマ『silent』が、先週、最終回を終えた。
教室で、「きのう『silent』観た~?」「観た、観た」という会話がなくなるのは、とても淋しい。
〈cast〉
青羽紬【川口春奈】CDショップでバイトする26歳。
佐倉想【目黒蓮】18歳で失聴する病にかかり、23歳で聴力を失った中途失聴者。26歳。
戸川湊斗【鈴鹿央士】紬の恋人で、想の親友。紬と想の高校の同窓生。
桃野奈々【夏帆】生まれながらの聾者。大学で出会った想に、手話を教える。
春尾正輝【風間俊介】紬が手話を習いに行く手話教室の講師。手話通訳士。
〈story〉
紬は8年前、一生をかけて愛したいと思える恋人がいた。その恋人、想と高校卒業と同時に遠距離恋愛になり、「好きな人がいる」というメールで一方的に別れを告げられる。
それでも、湊斗とつきあい、CDショップでバイトし、前を向いて生きていた。
けれどある日。駅で想を見かけ、思わず声をかけるが返事がない。もやもやした気持ちで、待つでもなく駅で待っていると、彼が失聴していた事実を思い知らされるのだった。
紬は手話を習い、想と話をしようとするのだが。
わたしが所属するNPO法人「楽しく笑って人生を過ごす山梨手話の会」の松森果林副理事長の、このドラマについてのインタビュー記事を読んだ。
聞こえる耳を持っていても話を聞かない人もいるし、話せるのに伝えようとしない人もいる。
ほんとうに、そうだなあと思う。自分自身を振り返っても。
本来、コミュニケーションというものはとてもシンプルなはずです。目と目を合わせる、たったそれだけで安心できる。温かな眼差しをそそぐ、それだけで愛を伝えられる。指先の微細な動きの変化でその人の関係性だって表現できる。言葉を超えた視線の先に、一緒に見て行ける世界がある。
本来シンプルなコミュニケーション。けれど人の心のややこしさが、「言葉」を超えて、わかり合うことの難しさを構成していく。
最終回の紬の言葉が、そんなこんなを語っていた。
「人それぞれ違う考え方があって、違う生き方してきたんだから、分かり合えないことは絶対ある。他人のことを可愛そうに思ったり、間違ってるって否定したくもなる。それでも一緒にいたいと思う人と一緒にいるために、言葉はあるんだと思う」
そしてこれも最終回の、奈々の言葉が胸に落ちた。
「私たちはうつむいていたら、優しく声をかけてもらっても気づけないんだよ。見ようとしないとダメだよ」
わたし自身、見ようとしないで、聞こうとしないで、気づけないことがたくさんある。たぶん、これまでにも、たくさんあったはずだ。
『silent』は、そんな数々のことに気づかせてくれるドラマだった。
青羽紬役の川口春奈と、佐倉想役の目黒蓮。(画像はお借りしました)
以下、ドラマのなかでもよく出てきた手話をいくつか載せてみましょう。
『わたしたちの手話 学習辞典Ⅰ』(全日本ろうあ連盟)から。
ちなみに想の妹、萌が、紬の弟、光に貸した3冊のなかに、この手話学習辞典のⅡがありました。基本を学ぶにはⅠの方がいいかもしれませんが、新しい手話や専門用語も入っているこちらを選んだのかな。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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