一昨年、オドリコソウが群生していた場所を偵察した。我が家から徒歩30秒ほどの道路沿いの荒れた桑畑だ。
真っ白い花で、だから白花オドリコソウともいうらしい。
オドリコソウを見つけたはいいけれど、一目見て淋しく思った。ずいぶんと数が減っていたのだ。それはヤエムグラがそこらじゅうに伸びていたからで、そのあいだにぽつりぽつりといくつかのオドリコソウを見つけられるといった具合だ。
植物の世界も、強いものが生き残る。
致し方ないことである。
ヤエムグラを調べると、芭蕉の句が出てきた。
山賤の おとがい閉る 葎かな
やまがつのおとがいとづるむぐらかな
松尾芭蕉
山梨の、現在の都留市で詠んだと推測されている句だ。
一面にヤエムグラが生い茂る甲斐の山のなかで、不意に山賤(木こり)に出逢った。問うても返事はない。ただ下顎(おとがい)を閉じている。
そんな意味合いだという。
芥川龍之介は、この句を「純然たる人物画」だと評し、こうかいている。
ことに、「山賤の」は「おとがい閉る」に気味の悪い大きさを表している。
葎が人の肩ほどまでに生い茂り、そこに無愛想な樵がぬっと顔を出しているのが見えた。そう捕らえる読み方もあるらしい。
「葎」の季語は、夏。今年2022年は、5月5日のきのう、立夏を迎えた。
ヤエムグラの季節は、これからだ。
ヤエムグラの広がり方が半端なく、草萌ゆるといった面持ち。
葉っぱは6枚に見えましたが、本来の葉は2枚であとは「托葉(たくよう)」と呼ばれ、葉の付け根にある小さな葉のような姿をしたものだそうです。それが、本来の葉と同じ大きさなのがヤエムグラの特徴なのだとか。
オドリコソウ、咲いていましたが、かなり減っていました。
ヤエムグラと似ているのは、段々になって咲いているところ。アフタヌーンティーのスタンドみたい。
蕾は、ちょっとバカボンのパパの鼻毛っぽい(笑)
オドリコソウと同じくらいの数のカキドオシが、咲いていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。