野蒜(のびる)という名は、一度聞いたら忘れない覚えやすい名だ。
春になれば、そこここに伸びる、そのまっすぐに伸びた細葱のような植物こそが「野蒜」だからだ。
野蒜は、ユリ科ネギ属の多年草。
にんにく、ニラ、葱、らっきょう、そして野蒜を、 「五葷(ごくん)」といい、仏教では、欲情や怒りの心を起こすとして食べることを禁じていたとか。
辛く臭気のあるこれら五種の野菜は、それだけ栄養があり、効能も多いということなのだろう。
これらの香味野菜が好物のわたしだが、欲情はともかくも、怒りの心が起き上がることがとても少なくなったと実感する。
無論、歳を重ねたこともあるが、ひとつには、手話教室に通い始めてからの変化だと思っている。
よく笑うポジティブな人が、手話教室には多い。勉強会に行くと自然と笑顔が多くなり、すーっと負の感情が消えていく。
なにしろ会の名前が「楽しく笑って人生を過ごす山梨手話の会」である。
その名をつけた先生がまた、よく笑う。そして、人を笑わせるのが大好きときている。
実際に、不足すると精神のバランスが崩れて怒りやすくなるという脳内物質「セロトニン」は、笑顔になることで分泌が活発になるというデータもあるそうだ。
野蒜には、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄分など健康に欠かせないミネラルが豊富で、身体を温める作用もあるのだとか。
指の動きは歳と共に脳との連携を難しくしているが、野蒜を食べて背筋を伸ばし、大型連休が明けたらまた笑いに、いや、手話を勉強しに行きたい。
スズランのあいだに伸びる野蒜。スズランには毒があるので近くに生えている野蒜は食べません。
ごそっと抜けました。
きれいに洗って。
夫が収穫したお化け椎茸と並べると、大小の感覚がズレていくような不思議な気持ちに。
まだまだたくさん採れるので、贅沢な使い方を。らっきょうのように漬けても美味しそう。
椎茸はバター醤油焼きに。野蒜は、卵ディップに。
エシャレットより、やわらかい風味でした。
パンは、いただきものの「一本堂」の焼き立て食パン。
チーズをこんなふうに入れて焼くんだね。今度やってみよう。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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