11月の句会は、初めての吟行。
いつも句会をする公民館から車で15分ほどの「東光寺」を歩く。武田信玄公が定めた5つの寺院「甲府五山」のひとつだそうだ。
前回の句会で、季語は、立冬を迎えた時期なので冬と、けれど紅葉も見られるので秋と、どちらでもよいとのアドバイスがあった。
前日の冷え込みと冷たい雨が、まるで嘘だったかのように冬空が晴れわたり、気温も上がった。皆、コートを脱いで、思い思いに寺の境内を歩いた。
とても気持ちよく、いつもはあまり話さない先輩たちと言葉を交わすこともできた。それでも、その場で限られた時間で俳句を詠むのは難しい。刻々と過ぎていく時間に、焦りを感じた。ようやく句を出し、先生からの吟行についてのお話を聴く。
・心が動いたものを一瞬にして捉まえる。
・大きな風景にばかり気を取られず、足もとや小さなものにも目を向ける。
・その土地では、そこに住んでいる人の気持ちになる。逆に自分の暮らしている土地では旅人の気持ちになる。
・記憶に残そうと心に決めて臨む。
・歴史など、予備知識も大切。
心がひとところに落ちつかず、思うようにいかなかった吟行だが、吟行に限らず旅をするときの心得にしようと思った。
ナビが当てにならず、迷子になった末にようやくたどり着きました。
わたしが詠んだ句は、こちら。
色変へぬ松や戸のなき寺の門
松が伸びやかに冬空へ向かっていて、あたりまえなんだけど、お寺の門には扉がなくて、誰にでも開放されているような気がしました。「色変へぬ松」は色を変えていく紅葉と比べ、変わらずに緑が生き生きしている松を指す秋の季語です。
瓶の葉のしずくに宿る冬日かな
瓶のなかの蓮の葉のしずく。冬の陽を受けとめ輝いてていました。
蓮の葉と詠まなかったのは、季重なりが心配だったから。こういうの、どうなんだろう。季節は重なっていて当たり前だけど、それを俳句で表現するのは難しい。
門をくぐると、まず砂紋が目に入りました。花梨の実が真ん中に。
石蕗の花。これも詠みたかった。
陽の光を両手で抱えたような石仏さん。これも詠みたかった。
山茶花が、葉に比べると小さな花で清楚だと感じました。
武田菱が目に飛びこんできた本堂。
ふたたび門を出て目にした、如意輪観音。頬杖をついて考えています。人々をどうしたら幸せにできるのか。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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