7月の句会。兼題は、「青田」「緑蔭(りょくいん)」。
「青田」は、夏の地理の季語。「青田風」「青田波」「青田道」などの傍題がある。
大粒の雨降る青田母の国 成田千空
故郷青森へ帰省した際、青田に雨が降るさまを難しい言葉を使わずに詠んだ、千空代表句だそうだ。
甲斐駒ケ嶽ふかぶかと青田入れ 廣瀬直人
甲斐駒ヶ岳が、裾野に広がる青田を見下ろしている様子だろうか。雄大な風景が詠まれている。
「青田」は、強い生命力を持つ季語だという。
「緑蔭」は、夏の植物の季語。緑の繁った木立の陰をいう。植物そのものではない、こんな言葉も、植物の季語に分類されるのだと知った。
緑蔭にしばらくイルカ調教師 廣瀬直人
緑蔭の安らぎと、濡れた海の雰囲気を取り合わせた句。
緑蔭をよろこびの影すぎしのみ 飯田龍太
おさない娘を亡くした龍太が、緑蔭が作った安らぎのなかを幸せそうに通り過ぎる人々を詠んだと言われているそうだ。
「緑蔭」は、炎天下とは別世界の涼しさにある安らぎを表す季語だという。
わたしの句は、こちら。
緑蔭や古き文庫の領収書
たまたま持って出た昔読んだ文庫本。そこにはレシートが挟まっていて、ああ、何年前の何月にあの本屋で買って読んだんだとハッとした気持ちを詠んだ。
「文庫」が「○○文庫」のような場所に読みとれてしまい、文庫本だとわかりにくいとの指摘があった。「文庫」「新刊」と呼び慣わしていた自分の言葉が、一般的ではないことを知り新鮮だった。
今回の句会で印象に残ったことは、季語の持つ力を存分に生かすこと。「青田」は、広大さや強い生命力を持ち、「緑蔭」は、涼しさや安らぎの力を持つ。
同じ緑を表す言葉でありながら、まるで違うイメージの2つの季語に、季語というものをあらためて教わった気がした。
7月の兼題は、「白桃」「天の川」。早くも秋の季語だ。
句会当日朝、ゴミ出しの帰り道。
車を停めて眺めた、明野町の名もない棚田。
西には南アルプス連峰。甲斐駒が見えています。
そして北には、八ヶ岳連峰。
ちょっとお洒落な案山子ガールが、いました。
少し寄り道して、八ヶ岳スポットへ。
季語「山滴る」の季節ですね。
さえさんの句、物語がありますね。
レシートが挟んであったことから、過去に引き戻される。
懐かしい気持ち、文庫本を買った頃にあったことなど思い出す。
それが緑陰という季語によってより鮮明になってきますね。
私は先日ブックオフで100円の本を買ったら、県内の女性の電気代の領収書が挟んでありました。
どんな方だろう、電気料金から一人暮らしだろうか、何歳ぐらいかな、名前から私より少し年上?
などいろいろ想像してしまいました。
でも古本屋さんに持ち込みする時は個人情報の書かれたものはきちんと外していきましょうね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。