『なくなりそうな世界のことば』のなかに、ウェールズ語の「HIRAETH(ヒライス)」という言葉があり、わけもなく魅かれる自分を感じていた。
もう帰れない場所に、帰りたいと思う気持ち
という意味を持つ言葉だそうだ。解説に、こうもある。
もう決して届かないものに対しての憧れは切なく、だからこそ一層、捨てがたいものになるのか。
東京生まれのわたしには、田舎というものがない。
故郷に帰りたいと思う気持ちが、だから理解できない部分があるのだと思う。
東京の実家の両親は健在で、東京に「帰る」という言葉も使えるかも知れない。上京すれば会いたい人もけっこういるし、東京が故郷であるとも言えるだろう。
しかしむかしよく歌われたような、例えばさだまさしの『案山子』だとか、そこに登場する「故郷」という言葉に対するものと、わたしが思う東京とは、思いの温度がまったく違う。似て非なるものだと、ずっと思ってきた。それが少し、淋しかった。
さて。先日出かけた東京で、夫と炉端焼きの店に入った。
「むかし、行ったよねえ。炉端焼きの店」と、わたし。
「釧路でねえ」と、夫。
結婚した次の年だったから、31年前になる。
カウンターで酒を酌み交わしながら、ふっと「HIRAETH」を連想した。あの釧路の炉端焼きの店。あの頃の自分、あの頃のわたしたち。
あの頃の自分自身が、もう帰れない場所、帰りたいと思う場所なんじゃないのかな、と。そしてそれは、たぶん今に通じている。
「HIRAETH」の挿し絵です。映画『ウェールズの山』を思い出しました。
『なくなりそうな世界のことば』→ 「ナティンnating」、「ンブラBULA」、「シマナSIMANA」、「イヨマンテ IYOMANTE」
浅草の『炉ばた焼きたぬき』です。
狸いろいろが、カウンターにも並んでいました。可愛い♡
灰皿も、味のある雰囲気の狸さんでした。煙草、吸わないけど。
可愛くない狸も! これ、徳利なんです。
後ろ姿には、哀愁が漂っていますね~(笑)
わーい。サザエ焼いてもらった!
帆立も! 切って葱がのせてあって、タレが美味でした。
ハイ、チーズ! って言ったわけじゃないんだけど(笑)
☆『地球の歩き方』特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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