神戸の夫の実家の片づけをして持ち帰ったものが多々あり、そのひとつに、南部鉄のすき焼き鍋がある。
「これ、今使ってるやつより、きれいでしっかりしてる」
そう言って、持ち帰ることに決めたのはわたしだ。少しだけ錆びていたが、問題ない。しかし、とりあえず古いのを捨てる前に、一度使ってみようということになった。
「豚すきかな」
という夫に、ちょっと考えて言った。
「神戸ではさ、お肉って言えば牛肉なんだよね?」
「だね」
うちでは、牛肉を買うことはほとんどない。
「じゃ、すき焼き、やっぱり牛にする? 鍋が牛の味、覚えてるかもしれないから、一回目は神戸風で」
そんなふうにして、久しぶりに食べた牛肉のすき焼きは、思いのほかおいしく、鍋もちゃんと使えることがわかった。
「熱伝導率が、いい」
鍋奉行の夫も、うなずく正真正銘の南部鉄器だった。
新しいものを手に入れたら、古いものを捨てる。それがどれだけ大切なことなのか、神戸の家の片づけで身に沁みた。我が家の片づけも、していかねば。
「南部鉄器」とかかれた箱に入っていました。外側が錆びているようにも見えましたが、模様入りのこういう色の鉄器でした。
久しぶりの牛肉のすき焼き。といっても、高価ではない切り落としで。
牛肉だと、お麩の味が違う! という発見をしました。すき焼きの具でいちばん好きなのお麩かも。
卵は混ぜずに、最初黄身にお肉をつけて食べたい派です。
久しぶりに日本酒を。「甲斐男山」です。
翌朝も、残りを楽しみました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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