2つ目に訪ねたのは、青森市の縄文遺跡「三内丸山遺跡」に隣接する美術館「青森県立美術館」。
青森の豊かな自然や縄文パワーを根底に置き、青森ゆかりのアーティストたちを中心に、多様性に富んだ芸術の魅力を発進し続けている美術館だ。
睨むような目線を向ける少女を描いた作品で人気の、奈良美智。
戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」と謳われる写真家、小島一郎。
そして、友人とふたり小説を読み、その生き様に感銘を受けた棟方志功の板画が待っていた。
奈良美智の少女たちや「あおもり犬」も楽しかったけれど、どっぷりと棟方志功の世界に身を置く時間になった。
棟方が、絵を描いたり板画を彫ったりするVTRには、筆の速さに圧倒された。終始笑顔の板画家に、情熱をじりじりと感じた。
美術館に辿り着くまで土砂降りのなかを歩き、ずぶ濡れになっていたが、棟方志功を堪能することができた。
さて。その夜は新青森駅から少し離れた「アートホテル青森」に宿泊した。
ずいぶん前に予約したにもかかわらず、第一候補のホテルではツインの部屋がなく、第二候補を素泊まりで予約したのだった。
けれど下調べもしていなかったのに、幸運にも津軽三味線の生演奏ライブをする居酒屋まで、徒歩2分と判明。雨でも歩ける距離だ。
青森の海鮮と、津軽三味線の音色、じょんがら節などのハリのある歌声を間近で楽しむことができた。
食事を終えると雨も上がっていて、海まで歩こうということになる。暗闇のなか、青森湾がすぐそこに見えていた。漁船が停泊している。
「うとう丸、だって」
「棟方志功がチヤと結婚式挙げたのって、善知鳥(うとう)神社だったよね」
ふたり気持ちよく酔っ払っていて、ふらふらと歩く。
「こっちに、神社が見えた気がする」
「おお! 善知鳥神社だ」
「え、ここでふたりが結婚したの?」「そうだよ!」
旅の神様か。アートの神様か。善知鳥神社のお導きか。
偶然がいくつも重なり、思いのほか心愉しい夜となったのだった。
雨にぐっしょり濡れた「あおもり犬」奈良美智。
青森出身の奈良美智の展示室には、様々な表情の少女たちが描かれていました。
展示方法も、凝っています。「アオモリヒュッテ」(山小屋?)の窓からなかを覗くことも、なかに入ることもできました。隅間から写真を撮る友人。
こんな部屋もありました。友人が向こうの窓から覗いていました。
「二菩薩釈迦十大弟子」棟方志功。
棟方志功を詳しく知りたい方は、こちら。
「勝鬘譜(しょうまんふ)善知鳥版画曼荼羅」棟方志功。第2回新文展で特選。版画としては初めての快挙だったそうです。
「いろは板画柵」には、一文字ずつ違うデザインが施されていました。
作品の迫力にひきこまれ、じっくり見すぎていたのか、棟方志功の作品はあまりカメラに残っていませんでした。もっとカラフルな作品もあったのに。
宿泊した「アートホテル青森」のロビーには、ねぶたが飾られています。
「金魚ねぶた」は、高価だった金魚をモチーフにすることで、金運や商売繁盛の御利益などを願ったとか。
津軽三味線の生演奏を聴かせてもらった「りんご茶屋」で。お通しは、鰊の柔らか煮と”ミズ”という山菜のシャキシャキ煮。
わたしはビール。友人は、日本酒呑みくらべ。
青いお皿は「にしんの切り込み」。酒盗のようなものかな。麹で発酵させた感じでした。
翌朝、友人が眠っているあいだにふたたび訪ねた「善知鳥神社」。
善知鳥神社の池には、睡蓮が咲いていました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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