東京の母のところへ行った帰りに、渋谷の「山種美術館」へ東山魁夷を観に行った。日本画の専門美術館である。
没後25年記念「東山魁夷と日本の夏」。
じつをいうと、6月に開催した夫のグループ展の際、ひと月間違えて行ってしまい、まったく興味のない企画展がやっていて、がっくりして帰ってきたのだった。
だから、美術館のアクセスはよく知っている。ついでにちょこっと立ち寄れる、気軽な場所となった。間違えも、悪いことばかりじゃない。
東山魁夷の絵には昔から惹かれるところがあり、里山や湖などでやわらかな風景を目にした際、誰かにこんな言葉を口にすることも多かった。
「まるで、東山魁夷の絵みたいだね」
たいてい、みなうなずく。知らない人がいないほどに、有名な日本の画家なのだ。
けれど、詳しく知っているわけでもない。
霞がかったような山並みを、深く優しい色づかいで描いたものが多いイメージだった。
しかし、今回の企画展で中心に据えられていたのは、波飛沫を上げる海。
9mを超える大作『満ち来る潮』の力強さに圧倒された。
なんだろう。地球の、だろうか。ほとばしるような生命力に立ち尽くした。
友人川端康成に、「京都は今描いといていただかないとなくなります、京都のあるうちに描いておいてください」と言われ、京都を描いたという「京洛四季」4点にも、心がざわついた。
その掴みきれない、ほとばしるものや心のざわつきの奥にある何かが、東山魁夷の絵の世界へと誘っている。
次は、長野県立美術館「東山魁夷館」へ行ってみよう。
JR恵比寿駅からバスで2つ目。バス停のすぐ前です。
「京洛四季」夏『緑潤う』東山魁夷、68歳のときの作品。これ1点のみ撮影可でした。
9月23日までです。
恵比寿の駅前で、ラーメンを食べて帰りました。「らぁめん冠尾(かむろ)」で。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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