10年ほど前のことになる。
手作りパン教室に通っていた。といっても、全5回の短いあいだだ。
前日にこねていったパン生地を、教室で生成し焼いて、5人ほどのメンバーみんなで食べる。そんな楽しい教室だった。
だがこだわりは半端なく、干し葡萄から天然酵母を作るところから始め、マクロビオテックに徹した素材のみを使う。
イメージでいえば、「生成り」な人が集まっていた。
わたし個人を鑑みれば、「生成り」なナチュラリストには憧れはするものの届かない。
だが、そのなかにちょっと天然な20代の男子がいた。
天然酵母のパンは少し硬めだが噛めば噛むほど味わいがあり、美味しいものだ。それなのに平気でミミの部分を残し捨てることに、みな驚いていた。
もっとも印象に残っているのは、パン屋さんおススメのボールを購入したときで、若い生なりな女性とわたしは、ボールを手にとり言い合っていた。
「いいよね、これ」
「うん、いいね」
するとわたしにだけ向き直り、彼が訊いた。
「どこが、いいの?」
ピンときた。「いい」とはっきり言う人に、意味なく同調するタイプに見られることが、わたしにはままある。どうもおとなしそうに見えるらしい。
長いものにただただ巻かれる者への軽蔑のまなざしが、彼のなかに見てとれた。
「カーブが美しいし、縁もシンプルじゃない」
けれどわたしがきっぱりと自分の考えを言うと、彼はさもつまらなそうにプイッと離れていった。
自分を持たない人に見られたことよりも、ただただその態度に呆れたものだった。
パンをこねたり天然酵母が発酵するさまを眺めたりするだけで、心優しい気持ちになる教室通いだったが、そのシーンは渋めのスパイスとして記憶に残っている。
しかし何よりそこで焼いたオニオンロールが、忘れられないほど美味しかった。
天然酵母ではなくドライイーストの生地をホームベーカリーでこねた簡単バージョンだが、そのオニオンロールをステイホームな時間に再現してみた。
渋めのスパイスを残した彼も、10年経ち、今は大人になっているだろうか。
ホームベーカリーで第一発酵まで終えて、8等分にしてガス抜きした食パン生地。
サラダ油、塩、粗びき黒胡椒、オールスパイスで和えた玉葱を巻きます。ほんとはナツメグですが切らしていたのでオールスパイスを使いました。
くるくるっと。これを真ん中に切り目を入れて開くと。
こういう形に。
最終発酵を終えて。2個は何も加えず焼きました。
焼けた~膨らみ過ぎてくっついていました。
焦げがついている部分は、マヨネーズです。
ハイジの白パンをイメージしたプレーンパン。
夕食の主役になりました。
翌朝のご飯も、ブレックファーストな雰囲気に。
そのとき買ったボールは、今も毎日のように活躍してくれています。
そうでした、そうでした。
くるくるっと丸めて、真ん中に切り目を入れて開くとこんな形になって・・・
1番最初に習ったオニオンロールですが、3回習っただけでお休みすることになったので、すっかり忘れてしまってます。
いつ再開できるやら・・・また一からです。
ホームベーカリーを使うにしろ、パン作りってほんと大変ですよね。
さえさん、すごいです!
パンを焼ける人、尊敬します。
夕食も朝食も、手作りパンがあるだけでカフェのように温かみが増しますね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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