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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

ほたるいか

ふるさと納税した兵庫県香美町から、ほたるいかが届いた。

同封されていたパンフには、「春の訪れを告げるほたるいか」とある。

これから5月までが、旬だという。

水揚げされたばかりのほたるいかを冷凍したもので、刺身でも楽しめるというので、さっそく刺身でいただいた。

つるりと半透明に光る姿が美しく、ほーっとため息をつく。

これが暗い海で青く輝いたら、さぞやきれいだろう。

光る理由は断定されていないようだが、外敵の目をくらますために一瞬フラッシュのように光を発し残像を残し、その間に逃げるともいわれているそうだ。

 

ほたるいかで思い出す小説がある。『ニシノユキヒコの恋と冒険』のなかの1編「ドキドキしちゃう」だ。

30歳の幸彦には、恋人がいる。3つ年上の上司マナミだ。しかし、元カノのカノコと海辺の旅館を訪れた。ふたり夜の海を眺めるシーンが印象に残っていたため、ほたるいかの光を見たような気がしていた。

だがそれは、美しい残像だった。

幸彦は、ほたるいかの踊り食いをさせられたときのことを語っていた。

そういうの、僕だめなんだ。幸彦は言った。そういうのって、どんなの。あたしが聞き返すと、幸彦は、そういうの、と同じ言葉を繰り返した。

「幸彦って、なんか、センチメンタル?」あたしが聞くと、幸彦は、そうかも、と低く甘く答えた。せっけんの香がふたたび匂った。

カノコは、夜の海をまえに幸彦の鼓動を感じながら、言葉にせず思う。

ユキヒコ。戻れなくて、つまらないよ。ユキヒコ。時間が流れて、さみしいよ。ユキヒコ。あたしたち、ばかだったね。

波がときおり大きな音をたてて、寄せてくる。海が、大きく満ちてくる。夜の中で、あたしはいつまでも、ドキドキしている。

ほたるいかのおかげで久しぶりに開いた小説には、残像通りの夜の海風が流れていた。

まずは、お刺身で。生姜を薬味にしました。

ボイルして。ぷっくりと膨らむのがおもしろい。

苦手なかき揚げにも挑戦。玉葱とほたるいかのかき揚げ。

簡単イカスミパエリアランチ。ほたるいか、見えないけどたっぷり入っています。

カルディのご飯に混ぜるだけパエリアシリーズです。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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