「仲沢商店」で購入したシチリア産の全粒粉で、パンを焼いた。
膨らみは少なかったが、いつにも増して香ばしい匂いに焼き上がり、なかはもっちり、周りはサクッとした味わいだった。普通の強力粉より、ほろりと崩れるやわらかさがある。なぜかスパイシーな風味を感じた。
いつものパンとは、まったく違う味わいだが、だからこそ違う美味しさがあった。
全粒粉は、小麦を全部粉にした小麦粉なのだそうだ。
お米でいえば、玄米だ。
小麦の表皮や胚芽が含まれていて、食物繊維・ビタミン・ミネラル類が豊富。そのうえ、カロリーも少なめらしい。身体にもよさそうだ。
知らなかったが、シチリアの力強く降り注ぐ太陽の光、加えて穏やかな地中海と火山に育まれた恵み豊かな大地は、小麦栽培に最適だそうだ。「古代ローマの穀倉」とも謳われた小麦は質が高く、今も生産量はイタリアNo.1を誇るのだとか。
どうりでパスタやピザが、日々の食卓に上がるわけだ。
シチリアのパレルモを旅したのは、もう4年以上まえのことになる。パンを食べた記憶はあまりないが、B級グルメと魚が美味しい、アートの街だった。
旅したのは12月だったが、やはり太陽は優しく降り注いでいた。
街で会ったオーストリアから移住したという画家のセリフは、忘れられない。
「パレルモは、美しい街だ。何しろ人があったかい。たった4日しかいないのかい? 4カ月だって足りないよ。ここで仕事を探して暮らしたほうがいい」
旅の記憶が呼び起され、ノスタルジックな気分に浸らせてもらった。
全粒粉。薄い茶色がかった色です。
いつもの分量できれいにまとまりました。
ガス抜きしても、ガスはほとんど出ませんでした。
ちょっと小さめな焼き上がり。香ばしい匂いです。
切ると、端がほろりと崩れます。
焼きたてをランチにいただきました。サクッ、しっとりやわらか、ほろっ。
翌朝は、トーストして。
ほろほろこぼれた端っこを、野鳥たちにあげてみましたが、向日葵の種ばかり選んで持っていきました。パンくず、食べないのかな?
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。