毎年母たちに送っている、そして我が家でも楽しみにしていたシャインマスカットが今年も届いた。
届くたびに、その大きさに驚く。
「おーーっ!」
「おーーっ!」
「おーーっ!」
今年は、娘もいるので三重唱。トリオで驚きの声を発した。
大粒なだけではなく、美しい。シャインマスカットにしかない色合いで、みずみずしさを表現している。
「新鮮なうちに、どんどん食べようね。いっぱい食べてね」
娘に言うと、夫が小声で、しかし娘にしっかり聞こえるように釘を刺す。
「彼女にいっぱい食べてって、言っちゃダメ。言わなくてもいっぱい食べるんだから」
「いっぱい食べるよ」
娘は、不敵な微笑みを浮かべた。
亡くなった義父が、生前義母に言ったそうだ。
「一日3粒。それ以上は食べないように」
義母は、電話でわたしにこっそり言った。
「そんなの! 守ってられないわよ。美味しいんだもの」
その義母も、そして東京の母も、今年はひとり、そんな思い出とともにシャインマスカットを食べている。
ご多分に漏れず、我が家の冷蔵庫の洗って冷やしたシャインマスカットも、スピードモードでなくなっていく。
たっぷりあるにもかかわらず、こんなに美味しいんだから、我こそはたくさん食べたいという食い意地はみな持ち合わせているようだ。
夜には4粒しかなかったのでもう一房冷やして寝たのだが、翌朝にはその4粒がなくなっていた。
「食べた?」
夫に訊くと、返事がない。
誰がどれだけ食べたのか。お腹に入ってしまっては、永遠の謎である。
素晴らしく大粒でした。
美しい~そして、美味しい。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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