味噌はもう20年以上、山吹味噌と決めていた。
最初の頃は川崎で暮らしていた頃頼んでいた「地球人倶楽部」の宅配で。
「今日、地球人が来るよ」
息子に言うと、いつも決まってうれしそうに「宇宙人は?」と訊いたっけ。
こちらに越してきてからはネット販売で。だが製造元が作らなくなったと販売打ち切りになり、それからは少し離れた場所にある珍しい調味料などを豊富にそろえたスーパーまで足を運び、製造元は違うが同じ名の味噌を買い求めていた。
何かのついでがあるときにはいいけれど、味噌だけ買いに足を運ぶのは次第に億劫になっていたが、毎朝の味噌汁を美味しく味わいたい。ずっと続けてきた我が家の味で作りたい。その思いの方が強かった。
ところが先日、不意に違う味噌でもいいかという気持ちになり、夫と映画を観た帰りにイオンモールで味噌を買った。似たタイプの信州味噌を選びはしたが、これはかなりの冒険だ。
自分でも、この突然の心変わりには驚いた。
いったいわたしのなかで、何が起こったのだろう。
急にこれまでの執着よりも、新しいものを味わう楽しみの方が勝るような気がしたのだ。その瞬間、小さな断捨離をし、新らしいものを手にしたかのようなすっきりした気持ちになった。
味噌の味わいの違いはわずかだが、これから冒険が始まりそうな予感がしている。
久世福商店の信州味噌です。「高原乃華」洒落た名前ですね。
初めて味噌を変えた朝の食卓。お味噌汁は、大根、大根の葉、エノキダケ、油揚げ、茗荷。おいしかった。
焼いた厚揚げを味噌と葱でいただくのは、夫に教えてもらった食べ方。
味噌と葱を自分で好きなだけとって、いただきます。
この日の朝食は、茄子の胡麻油炒めと茗荷のお味噌汁。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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