WOWOWで、「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~(全6話)」が放映され、小津映画特集が組まれた。
その流れで、以前観たことのある小津安二郎監督映画『東京物語』を、ふたたび観ることになった。1953年、昭和28年に公開された映画だ。
〈cast〉
平山周吉【笠智衆】尾道で、老後の暮らしを静かに営む。
平山とみ【東山千栄子】周吉の妻。大らかで気立てがよい。
平山京子【香川京子】尾道で両親と暮らす次女。小学校教師。
平山幸一【山村聰】平山家、長男。東京の下町で開業医をしている。
金子志げ【杉村春子】平山家、長女。東京で、美容室を営む。
平山紀子【原節子】戦死した次男の妻。
〈story〉
周吉、とみの夫婦は、遙か遠い尾道から東京で暮らす子供たちを訪ねる。
長男幸一の家に宿泊するも、幸一は仕事が忙しく東京見物の約束も果たせない。長女志げの家にもいくが、志げも店が忙しく、義妹である紀子に頼み込み両親を連れ出してもらう。紀子は、仕事を休み義父母に1日つきあって観光名所を回り、小さなアパートで夕食や酒を振る舞った。
その後、幸一と志げが金を出し両親を熱海へと行かせるが、ひどい安宿で眠ることもままならず志げのもとへと帰らざるを得なかった。
なんで帰ってきたの、と突き放され、ふたりは泊まる場所を失った。
映画が撮影された1953年頃、東京⇔尾道間は、特急を使っても15時間もかかったという。
そんな長い長い旅の末にやってきた両親を、一応はもてなす形をとるが内心は「面倒だな」「こっちだって生活があるんだ」という本心が透けて見える息子と娘。しかしそれは、彼らも東京で暮らしていくだけで精一杯でだということでもあった。
子供なんてそんなもんだと思いつつも、やりきれない年老いた両親。
気持ちがすれ違ったまま、ふたりは尾道へ帰るのだが、途中とみの具合が悪くなって……。
そんなひとりひとりの胸のうちを、美しい情景を切りとりながら、映画はただただ淡々と描いていく。
この年代になったからかも知れないが、親の立場、子供たちの立場、未亡人紀子の立場、どの立場になっても観られるところが秀逸だ。
なんとかならないのかと思いつつ、やるせない共感やあきらめが漂い、静かななかにも胸がひりひりする映画だった。
☆画像はお借りしました。なつかしい雰囲気。子供の頃の塗り絵を思い出します。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。