築300年を超えるという古民家「台原家住宅」に、人形芝居「さんまいのおふだ」を観に行った。江戸時代から伝わるという糸あやつり人形も展示されているという。
室内に足を踏み入れると、まず黒光りした柱や梁の風情に圧倒される。
そして、そこに展示された糸あやつり人形たちの趣ある佇まいに、息を呑んだ。
一瞬怖いと感じたのは、まるで心を、感情を持っているように思えたからだ。
表情だけではない、さらりと着こなした着物の味わいだけでもない、何かをしっかりと見据えているような目の奥に、魂のようなものが見えた。
何かを感じ、何かを考えている。
人形芝居では、その人形が動き出した。
司会進行役は、展示されていた宮沢賢治『雪渡り』の「かんこ」が務めていた。
糸あやつり人形には、頭と両肩を固定する「利き糸」と手足、腰、顔を動かす「遊び糸」があることなど、顔を左右、また顎を出したりする動きは日本独特のものだということなどを自演して見せてくれた。
そして「さんまいのおふだ」は、ユーモアたっぷり甲州弁の人形たちが動き回っていた。
お供えの花をとりに山へ出かけた小僧さん。夢中になっているうちに日が暮れて、一晩泊めてもらったのは、人を喰う鬼ばさの家だった。
小僧さんの驚いたり、困ったり、慌てたり、山を登ったり、蒲団に横になったり、そのひとつひとつの動きに引き込まれた。和尚のとぼけた動きにも風格があり、笑った。
ラストは「獅子舞」。
獅子が生きているかのように舞い、ときには後ろ足で耳を掻いたり、尻尾の蚤をとるかのような仕草をしたりとキュートな動きで笑わせてくれた。
その獅子のなかに、ふたりの人形が入っていて、獅子を舞わせていたのには驚いた。それをひとりで操る人形使いの技は素晴らしかった。
動いていなくても感情を持っているかのように見えた人形に、魂が吹き込まれた瞬間を見た気がした。
白州町の「七賢」などが並ぶ台ヶ原に建つ古民家「台原家住宅」。到着したのは夕刻18時半頃。19時から人形芝居が始まりました。
江戸時代から伝わるという糸あやつり人形は、北杜市須玉町「遊絲舎」の田中翠さんの作品。人形を操るのは「ヒトカタ座」の方々。
創作人形展も、開催されていました。
古民家ならではの展示ですね。右側のふたりは、宮沢賢治『雪渡り』の「かんこ」と「四郎」です。
静かな表情をしているのに、なぜか心のなかを見抜かれそうな怖さを感じました。名は「波竜」。
今にも動き出しそうです。「清姫」。
魔女や猫など、ファンタジー世界のなかへと誘ってくれそうな人形たちも。
人形芝居のチケットは完売だそうですが、創作人形展は4月24日(日)まで開催しています。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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