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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

映画『永い言い訳』

西川美和監督作品、映画『永い言い訳』は、本木雅弘が『おくりびと』以来8年ぶりに主演した映画だ。

初っ端から圧倒された。何気ない夫婦の日常なのに、胸がえぐられるような痛みが走る。夫である主人公が、ものすごく嫌な、鼻持ちならない奴なのだ。

〈cast〉

衣笠幸夫【本木雅弘】人気作家、ペンネーム津村啓。

衣笠夏子【深津絵里】幸夫の妻。美容師。旅先でバスの事故で死亡。

大宮陽一【竹原ピストル】夏子の親友の夫。妻が夏子とともに死んだ。長距離トラックの運転手。

大宮真平【藤田健心】陽一の息子。小6。

大宮灯【白鳥玉季】陽一の娘。5歳。

〈story〉

人気作家の幸夫は、バスの事故で突然妻、夏子を亡くす。

妻の留守に恋人(黒木華)との情事を楽しんでいた幸夫には、夏子の死は遠いところにあるように感じた。さすが作家だと言われるような弔辞を切々と述べ、涙の出ない顔を手で覆う。しかし夏子とともに死んだ親友(堀内敬子)の夫、陽一は真逆だった。人前で大声で泣きわめき、バス会社を責め、妻を返せと訴える。彼には、6年生の真平と保育園に通う灯がいて、留守がちな仕事ゆえに困っていた。幸夫は自分の気まぐれに戸惑いながらも、大宮家の留守番を引き受けるのだが。

奥さん亡くなってから、ちゃんと泣きましたか。一度でも。

担当編集者(池松壮亮)は、問う。

もう愛してない。ひとかけらも。

夏子のスマートフォンには、メッセージが残っていた。

 

幸夫は、悲しむことさえできなくなっていた。

妻に冷たい言葉ばかり浴びせていた。裏切ってもいた。コンプレックスの塊でじつは臆病で。そんな自分が嫌で嫌でたまらなくて、それでもどうすることもできなくて、妻に当たり傷つけてばかりいた。

それでも心の芯の部分で、妻の死に傷つき途方に暮れていた。

だからこそ、悲しみ方こそ違えど、同じように途方に暮れた大宮家の3人にすがるような気持ちだったのかもしれない。

 

自分のどうしようもなく嫌な部分に、抜け出そうともがきながらも振り回され、どんどん落ちていく。まるで自分を見ているみたいに、苦しい映画だった。

苦しみに凍った心を温めたのは、幸夫と子供たちのシーンだ。幸夫の芯の部分の心根の温かさを炙り出していた。

灯役の白鳥玉季は、ここからスタートして今は11歳。楽しみな子役だ。

本木雅弘に圧倒された映画でしたが、冒頭で死んでしまった深津絵里の存在感はやっぱりすごい。

画像はお借りしました。

COMMENT

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  1. ぱす より:

    こんばんわ
    「永い言い訳」見ました。
    最低な男だなあ~と、見ておりました。けれど、なぜか子供たちはなついていくんですね。
    何故だったんでしょう。寂しいもの同士だったから?なのでしょうか。
    西川美和監督の映画は、人の心の深層をすごくえぐり取るものがありますね。
    「ディアドクター」や「ゆれる」を見ました。

    灯役の女の子、「凪のお暇」に出ていましたね。
    小さかったんだ~と思いました。子役はあっという間に大きくなってしまいますね。

  2. さえ より:

    >ぱすさん
    おはようございます♩
    観ましたか~しょっぱなから思いましたよね。最低な男!
    そうそう。なぜか子供たちがなついて。最初は嘘の顔なのかな? と思って見ていたんだけど、そうじゃなかった。人間の根っこのところがシンクロしたのかな。
    西川作品、『ディアドクター』観ました。
    『ゆれる』は、ずっと前に観ました。たしか山梨が舞台でしたね。
    灯役、『凪のお暇』ではもうしっかりした役者さんになっていましたね。これからも楽しみですね。

PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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