『伊藤くん AtoE』(新潮社文庫)のなかの一文に、ハッとさせられるものがあった。クズケンと莉桜の会話だ。
「俺、昔、新大久保のファミレスでバイトしてたんですけどね、厨房とフロアをひどい時は二人で回さなきゃいけないような人手不足の店なんですよ。すごく混む日はとてもじゃないけど回らない。客に早くしろ、と怒鳴られて、テンパってミスも続く。そして、崩壊がやってくるんですよ」
「崩壊?」
「テーブルには汚れた皿がいっぱい。厨房も洗い物でいっぱい。入店した客を通そうにも、出す皿もないし、どの席にも案内できない。完全なる飽和状態。でも、その崩壊を立て直す方法っつうのが、たった一枚の皿を洗うことだったりする。一枚の皿を洗うことで停止していた歯車がゆっくりだけど、回りだすんですよね……」
最近崩壊に至ることはなくなったが、子どもたちが小さかった頃にはよくあることだった。と、安心していたら、違う方向から崩壊の兆しがちらちらと見え始めるようになった。自分のキャパシティを考慮したうえで予定を入れているはずなのに、それがこなせないことが多くなってきたのだ。
だいじょうぶ。そう踏んでいたのに、フタを開けてみるとできていなかった。
そんなときには、体力低下。精神力低下。集中力低下。つまりは歳である。と、歳のせいにして落ち着きたいところなのだが、周りを見ると体力、精神力、集中力、すべてに上回っている年上の方も多い。なので正確に言えば、わたしの歳のとり方のせいなのである。
「ああ、ダメだ。どうしよう」
ただただ、パニックに近い状態に、陥る。
だがクズケンの言葉を読み、ふっと肩の力が抜けたような気がした。全部やることを想定せず、とりあえずひとつから始めることを考えよう。
茗荷畑です。草とりも一枚の皿ならぬ、一本の雑草からですね。
ローズマリー、レモンバーム、イタリアンパセリ、蕗、ツルニチニチソウ、初雪カズラほかと、雑草が入り乱れています。
切り株を覆い尽くしたアイビーと雪柳は、ヤマボウシを囲んでいます。
今庭で咲いているのは、姫シャラの白い花。
シモツケは、娘が小学校からもらった苗木が毎年咲いて。
ガク紫陽花の蕾って、手毬飴みたいで可愛いんですよね。
一雨あると雑草は瞬く間に伸びています。さえさんの植物園は敷地も広大な様で大変ですね。私の作業場は専ら柿ノ木の下の、娘婿の再生したデッキです。午前中の、涼しい内に手芸を始めます。一時間もすると飽きてしまい1人でお茶したり、気ままな時間を過ごし夕方を迎えます。焦らない生活も、それはそれで満足です。
少しずつですが前に前にと、進んで行けます。
ゴーヤの枝に、つま楊枝位の実がなって来ました。
悠里さん
ほんとうに比喩ではなく、一雨ごとに雑草伸びていきますよね・・・。
娘さんのご主人、ウッドデッキも直されたんですね。すごい!
悠里さんは手作りがプロ並みだから、手芸楽しいでしょうね。焦らない生活、いいですね~♡
少しずつ前に前に。わたしも見習いたいです。
ゴーヤ、楽しみですね♩
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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