産直野菜を売る「おいしい市場」で、ヒトリシズカの苗を見つけた。
2つ購入し、森に植えることにした。明るい日陰を好むという。
そういえば、と思いつき、出かけてみた。
明野町内にある「梅の木遺跡」だ。その森でヒトリシズカが群生していたのを数年前に見て、目を細めたのだった。
果たして、咲いていた。それも、たくさん。
花畑になるような咲き方はしない。けれど、それだけにじっと足下を見ながら歩けば、ここだよ、と微笑んでくれるような、胸にささやかなぬくもりを灯してくれるような、そんな咲き方だ。
ヒトリシズカは、源義経と恋仲にあった静御前の名をとったといわれている。
源義経に愛され吉野落ちに同行したが捕らえられ、鎌倉は鶴岡八幡宮前で義経を恋慕う「しずやしず」を歌い舞った静御前。
その名からは、ひっそり静かに淋しげに咲いているかのような印象を受ける。悲恋を貫いた静御前の憂いを背負っているようにも思える。
けれど実際、森に咲く様子を見ると、イメージは一変する。
身を寄せ合うように咲くヒトリシズカたちは、にぎやかにおしゃべりでもしているのように見えた。葉が斜め上を向いている様子が、両手を広げて上を見上げているようでなんともコミカルな表情を漂わせているからかもしれない。
その葉の様子こそが、静御前が一人舞う姿を連想させたのだろう。
そして、一人舞う女の強さをも、想起させたのではないだろうか。
ヒトリシズカの苗。根付くかな~
思い立って行ってみた「梅の木遺跡」。新緑でした。
咲いていたヒトリシズカ。可愛い。
たくさん咲いていました。
まだ蕾の子もいて。こんなふうに開いていくんですね。
ヒトリシズカなのに、にぎやかに見えてホッとします。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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