飛行機で観た映画『グリーンブック』に、とても印象的な言葉があった。
親父に言われた。
「目の前のことに全力を注げ。仕事なら仕事。笑うなら笑う。食うときは最期のメシだと思って食え」
フライドチキンを食べたことがないというドクターに、トニーが食べてみろと強引に薦めるシーンだ。あまりにも美味しそうに食べるトニーに半ば呆れつつ、ドクターが問うた答えがこれだった。
1962年。カーネギーホールで暮らす黒人の天才ピアニスト、ドクターは、いまだ差別が根深い南部へのツアーを計画する。運転手として雇ったのが、一流ナイトクラブの用心棒トニーだ。無学でガサツだが腕っぷしはめっぽう強く度胸がある。まったく正反対の性格のふたりが繰り広げるロードムービーだ。
タイトル『グリーンブック』は「黒人用旅行ガイド」で、黒人を受け入れる宿や食事ができる場所が記されていた。
多くのトラブルを通過しながら、ドクターはトニーの、トニーはドクターの、人としての魅力に惹かれ合っていく。
そんなトニーの人となりは、家族愛あふれる大食漢で、単純明快。
冒頭の言葉は、それをとてもよく表している。
妻への手紙に「ドクターは淋しそうだ」と何度も綴るトニーは、ひとり淋しい気持ちを抱えているのはよくない、生きているなら楽しくやらなくちゃという、まさに単純明快な持論があるのだろう。
目の前のことに全力を注げ。
愛あふれるトニーのセリフが、わたしのなかにピアノのリズムとともに響き続けている。
映画パンフの写真がないので、咲き始めた水仙を。
寄り添うように咲く子もあり。
1輪パッと咲く子もあり。やわらかな黄と濃い黄色のコントラストが、きれいです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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