森絵都の短編集『あしたのことば』には、小学校6年生の国語教科書に掲載されている「帰り道」ほか、9編が収められている。
それぞれの短編に、9人のイラストレーターが描いたカラーイラストのページが入ったちょっと贅沢な文庫本だ。
共通のテーマは、「言葉」。
「帰り道」
しゃべっていないと落ち着かない周也と、無口な律。周也の何気なく発した言葉で気まずくなった空気を意識しつつ、ふたりで歩く帰り道、突然晴れた空から強い雨が降り出して。
周也と律、ふたりの視点で構成されていて、どちらの気持ちも読むことができる。
「あの子がにがて」
どうしてもクラスメイトの真紀ちゃんが好きになれない5年生の水穂。向こうもこっちを嫌っているようだ。塾仲間に愚痴をこぼすと、思いがけない言葉が返ってきた。
「あんたと真紀ちゃんは、生まれながらに相性が悪い。それだけや」
「へ?」
「馬が合わへん、ちゅうやっちゃ」
水穂は、この言葉がすとんと胸に落ち、救われたような気持ちになる。
「富田さんへのメール」
クラス対抗バレーボール大会で失敗して、キャプテンの富田さんに「死ね」と言われた美里は、長い長いメールをかく。
「風と雨」
おしゃべりな風香は、5年生。学校で返事以外の言葉を発しない瑠雨(るう)ちゃんと一緒にいることが多い。ある日風香は、瑠雨ちゃんが様々な音の魅力を聴くことができる耳を持っていることを知り、家に誘う。変わった歌を歌うじいちゃんの歌を聴いてもらおうと思ったのだ。
風香、瑠雨、達次郎(じいちゃん)、3人の視点から描かれている。
「あしたのことば」
親の離婚で遠い街へ引っ越した6年生の裕は、なんとなく何もかもがつまらなくなってしまう。そんなとき、クラスメイトがかけたありきたりの言葉が、裕の心に大きく響いた。
「%」
「野宮がおれの彼女になる確率って、何パーセント?」
意を決した木ノ下の告白に、野宮は答えた。
「マイナス二〇パーセント」
日々の些細な出来事のなかでの言葉の大切さや、言葉の怖さにもスポットを当てた、温かな小説集だった。

その他「羽」「こりす物語」「遠いまたたき」。

「あの子がにがて」のイラスト。赤という名前のイラストレーターさんでした。この話がいちばん好きだった。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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