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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『ジヴェルニーの食卓』

引き続き、原田マハのアートをテーマにした小説を読んでいる。

中編4編を収めた『ジヴェルニーの食卓』には、印象派の画家たち、マティス、ドガ、セザンヌ、モネが登場する。裏表紙より。

新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。

「うつくしい墓 Interview avec Maria Magnolia」マティス

アンリ・マティスの晩年の日々を見つめるのは、家政婦マリア。

ピカソとの交流。病に倒れてからも、切り絵という手法を見出し、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の空間デザインを手がけ、次々と自分が求める美を作り出していく様子が語られる。

マティスの目。それは、恋する娘が覗きこむ鏡。

マティスの心。それは、みつめる対象にせいいっぱい傾けられた清らかな水を注ぐ水差し。

マティスの指。それは、胸にしみ入る戦慄を弾き出すピアノの鍵盤。

この世に生を享けたすべてのものが放つ喜びを愛する人間。

それが、アンリ・マティスという芸術家なのです。

「エトワール L'etoile」ドガ

”踊り子”の絵を多く描いたエドガー・ドガを、友人のアメリカ人女流画家メアリー・カサットが語る。

1860年代、パリでは”踊り子”と呼ばれる十代のバレエダンサーたちは、多くが貧しい家庭の子供で、養ってくれるパトロンに見出されるために踊っていたという。主役(エトワール)になれば、家族を食べさせていくと。

メアリーは、ドガが全裸の14歳の踊り子をモデルに筆を走らせる姿を見て、愕然とする。

 

「タンギー爺さん Le Pere Tanguy」セザンヌ

ポール・セザンヌに宛てた書簡のみで構成されている中編。手紙をかいたのはパリの画材商タンギーの娘だ。

ゴッホが画材のツケの代わりにと肖像画「タンギー爺さん」を描いたことは有名だが、セザンヌもまた絵の具代を溜めていて、手紙はその請求から始まる。

しかしその内容には、夢を抱いた若き貧乏画家たちが集った日々や、セザンヌの生い立ちや家族、友人との確執にまで及んでいた。

タンギー爺さんは、若き画家たちを、セザンヌの絵を心から愛していた。

「わしは無数の画家たちの絵を見てきたが、この画家は、誰にも似ていない。ほんとうに特別なんです。いつか必ず、世に認められる日がくる。世間が彼に追いつく日が」

「ジヴェルニーの食卓 A table a Giverny」モネ

語り手は、クロード・モネの2人目の妻アリスの娘で、モネの息子ジャンの妻であるブランシュ。(そのうえアリスの元夫は、モネのパトロンという複雑さ)

アリスとジャン亡き後、美しい庭園の広がるジヴェルニーで、ブランシュは義父であるモネの暮らしを切り盛りしていた。

若鶏の狩人風 早生ジャガイモのピュレ 農場風キャロットを添えて

など母アリスのレシピノートから「今日のメニュー」を決めるのも仕事のひとつだ。そして年老いて白内障になり絶望した画家を、完成間近で放り出された「睡蓮」の前に立たせることも。

 

4編がすべて4人の画家の晩年から死までを描いていて、つまり画家の人生そのものを身近な女性の視点から炙り出していて、とても興味深かった。

「マティス~自由なフォルム」「印象派モネからアメリカへ~ウスター美術館所蔵」を観てきたので、小説と反響し合って頭のなかが楽しいことになっています。

ポール・セザンヌの絵、じっくり観てみたいなあ。

 

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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