衝動買いした長嶋有の新刊『七、八月のストローク』。
するすると読み進められたのは、連作短編集のように19のシーンで区切られていたからだろうか。
サブタイトルというほどではなく、主にプールの場所を置いている。
「1・東京都N市民プール」「2・N市ブリーズマンション子供プール」といった感じだ。
ささやかな悩みを抱えた人々が「新たな一歩」を踏み出すひと夏を描いた群像劇
舞台は、築50年を迎える大規模マンション「ブリーズマンション」、その周辺。
登場人物は、マンションの子供プールで監視員のアルバイトをする高2の女子ふたり、一途にこのプールを愛する季乃(きの)と、母親の万引き癖に嫌気がさしている優等生かつみ。
そして、同い年の幼馴染みで高校を中退したばかりの樹(いつき)。
マンションの住民で、BL漫画好きの80代の女性、紺(こん)。
N市民プールに小学生の娘を通わせる高志は、樹の父親でもある。
そのN市民プールには、長く漫画を描いていなかった元人気漫画家、楠子(くすこ)が新たに漫画を描こうと取材を兼ねて通い始めていた。
A市総合体育館「大人のための水泳教室」に通うのは、27歳の好未(このみ)。大真面目に、息子を海やプールで死なせたくないからと水泳を始める。
50代の椚山(くぬぎやま)教授は、与那国島へと家出した教え子の育江を訪ねた。教授のゼミで知り合った夫婦の片割れだ。
小説は、彼らの夏をランダムに行ったり来たりしながら、どこかリンクするような不思議なタッチで描かれていた。
ストローク……水泳で、腕で水をかいて前進するための一動作のこと
この説明文が、本文のまえに置かれている。
読み終えて、この一文を読み返すと、登場人物たちがみな、自分なりのストロークで水をかき、前進しようとしていたのだとハッとさせられた。
それだけ自然に、ささやかな日常が描かれていたのである。
些細なことを気にかけたり、他人が見たらくだらないと思うようなことに必死になったり、答えが出せずに悩んだりしている彼らは、たぶん、わたしにとても似ている。

多くの人物が登場しますが、高校生の少女ふたりを描いた表紙絵だと思われます。
ピストルがプールの硬き面(も)にひびき 山口誓子
デビュー25周年を迎える芥川賞作家、長嶋有は俳人でもあります。小説のなかに、この句が引用されていてうれしくなりました。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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