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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『世界はうつくしいと』〈2〉

今一度、ホホホ座で見つけた『世界はうつくしいと』を紹介したい。

少し長いが、一部分を切りとって引用することは詩に対して失礼なので、全文引用したい。表題作だ。

〈世界はうつくしいと〉

うつくしいものの話をしよう。

いつからだろう。ふと気がつくと、

うつくしいということばを、ためらわず

口にすることを、誰もしなくなった。

そうしてわたしたちの会話は貧しくなった。

うつくしいものをうつくしいと言おう。

風の匂いはうつくしいと。渓谷の

石を伝わってゆく流れはうつくしいと。

午後の草に落ちている雲の影はうつくしいと。

遠くの低い山並みの静けさはうつくしいと。

きらめく川辺の光はうつくしいと。

おおきな樹のある街の通りはうつくしいと。

行き交いの、なにげない挨拶はうつくしいと。

花々があって、奥行きのある路地はうつくしいと。

雨の日の、家々の屋根の色はうつくしいと。

太い枝を空いっぱいにひろげる

晩秋の古寺の、大銀杏はうつくしいと。

冬がくるまえの、曇りの日の、

南天の、ちいさな朱い実はうつくしいと。

コムラサキの、実のむらさきはうつくしいと。

過ぎてゆく季節はうつくしいと。

さらりと老いてゆく人の姿はうつくしいと。

一体、ニュースとよばれる日々の破片が、

わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。

あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。

うつくしいものをうつくしいと言おう。

幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。

シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。

何ひとつ永遠なんてなく、いつか

すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。日々の破片が、

わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。

あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。

うつくしいものをうつくしいと言おう。

幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。

シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。

何ひとつ永遠なんてなく、いつか

すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。

友人のなかに、うつくしいものをちゃんとうつくしいと口にする人がいて、わたしはよくハッとさせられる。素直な気持ちを、静かに持ち続けたいと、そういうときに思うのだ。

表紙絵は、ドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒによる『墓と柩とミミズクのいる風景』。代表作は『雲海の上の旅人』で、裏寂れた岩場に立つ人物の後ろ姿が描かれている

 

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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