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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『元彼の遺言状』

夫が、書店店頭で購入した文庫である。新川帆立の小説は、初めて読む。

 

主人公は、弁護士剣持麗子、28歳。年収2000万には納得していない。金がすべてだとは無論思わないけれど、金は必要だ。働きに相当するものをもらうのは当然だと考えている。

ある日、そんな彼女の元彼が死んだ。奇々怪々な遺言状を残して。

僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る。

剣持は、元彼森川栄治の友人である篠田の、「自分が殺したかもしれない」というプランに乗ることにした。

犯人の特定は、3人の審査役が決め、警察には秘密裏に進める。

社長森川金治、副社長平井真人、専務森川定之が審査役だ。

遺言状には、支えてくれた人への贈与も事細かにかかれていた。

僕の元カノたち 軽井沢の土地と別荘

大会社森川製薬の御曹司、栄治の遺言状は、ネットで炎上する。それを呆れ顔で眺めつつも麗子は、仕事のうちと割り切って、元カノたちの相続審査へと出向くのだった。

 

しかし、こともあろうに遺言状が入った金庫が盗まれ、管理していた顧問弁護士が毒殺された。

栄治の兄富治。従弟の拓未。拓未の妻で栄治の元カノ雪乃。栄治を慕っていた姪紗英。風来坊の叔父銀治。看護師で栄治の世話をしていた元カノ朝陽、栄治の愛犬の世話をしていた獣医の堂上、その息子

果てさて。誰が犯人で、遺産を手に入れるのは、誰なのか。

 

学者である富治は、「ポトラッチ(競争的贈与)」説を力説する。

犯人に遺産を贈与することで、お返しをしなくてはいけないという負い目を負わせる。それが栄治の目論見なのではないかと。

富治は、バレンタインのお返しを忘れた場合を、例にとる。

「僕はその女性が仕事でミスをしたときに助けてあげるとか、何かそういう形でも良いから、お返しをしなくちゃ気が済まないような感じになってくる。つまり、職場の女性は僕にチョコレートをあげることで、僕を支配できるのです」

ほかにも「サンクスコスト」「コンコルド効果」などの心理的な気持ちの流され方に麗子はしっかり目に留めていて、自信満々に弁護士としての仕事に集中するのだった。

 

しかし、依頼人である篠田に、クビを切られてしまう。

「君には、お金よりも大事なものがある人の気持ちが分からないんだろう」

負けず嫌いで、負けることを知らない麗子は、はたと立ち止まる。そして、栄治を殺した犯人を、ようやく捜し始めるのだった。

「このミステリーがすごい!」大賞受賞作なんですね。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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