文庫版が出たばかりの『クスノキの番人』をブックオフでゲットした。
新刊の頃から読みたいと思っていた小説だ。
クスノキの巨木は、都心から少し離れた郊外の小さな神社の敷地内にある。
クスノキには、願いが叶うパワースポットだと訪れる人も多いが、しかし「月郷(つきさと)神社」は、御守りや御朱印どころか賽銭箱も置いていない古びただけの神社だ。
そういう神社は無人であるケースも多いが、社務所には常に「クスノキの番人」が必要だった。
この巨木は、噂とは別の”力”を持っているからだ。
直井玲斗(26歳)は、存在すら知らなかった伯母、柳澤千舟に助けられ、何も知らされることのないまま「クスノキの番人」として働くことになった。
将来の夢は? と訊かれても、玲斗に答えはない。
ほかに家庭を持つ父は、自分を認知しなかった。無謀にも母は自分をひとりで育てようとしたが、10歳にもならないうちに乳癌で死んだ。
高校卒業後、真面目に働いていた食品会社ではミスをなすりつけられ退職。工作機器を扱うリサイクル工場で不当解雇され、出されなかった給与と退職金の分をと機械を盗みに入り逮捕された。
「欠陥のある機械は、いくら修理してもまた故障する。あいつも同じで、所詮は欠陥品。いつかもっと悪いことをして、刑務所に入るだろう」
不当解雇した悪徳社長の言葉だ。
「どんなふうでもいいから、とにかく生きていければいい」
玲斗には、夢などなかった。
クスノキには人が入れるほどの大きな洞があり、夜は予約制でその洞に「祈念」に訪れる人がいる。
どうやらそれは、満月と新月の夜周辺に限定されている。
千舟は、玲斗にクスノキの”力”を教えようとしない。自分で知っていく以外にないという。何が何だかわからないまま「クスノキの番人」をする玲斗だが、ある日不審な人影を見つけた。
祈念に訪れた父親の秘密を探ろうとする女子大生、佐治優美(さじゆうみ)だった。
「訊いてあっさり答えてくれるぐらいなら、最初からコソコソしないはずでしょ。あたしたちには内緒にしておきたい何かがあるんだと思う」
娘と妻に隠している、優美の父親の秘密とは?
そして、クスノキの”力”とは?
「東野圭吾の新たな代表作、誕生。」と謳われる”家族”というものを描いた温かなミステリ。
人殺しの話ばかり書いていると、時折ふと、人を生かす話を書きたくなるのです
東野圭吾
ちょっと傷ついていたけれど、文庫の半額で買えた新刊。文字が大きくて読みやすかった。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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