本屋の店頭で手に取った初めて読む作家の文庫本。
手に取ったきっかけは、シミルボンサイトで見かけたからだ。
守屋聡史さんの【後味が悪すぎるイヤミスの佳作】
解説には「ミステリーというジャンルに区分けされない」とあったけれど、守屋さんの言うようにたしかにイヤミスだった。
帯には「日本一の大どんでん返しと断言したい!」とあるけれど、「後味の悪さは最強」の方が言い得てるんじゃないかと思うほど最悪な読後感。
今すぐ、いやーな気分に浸りたい方には、オススメだ。
小説は、すべてフェイスブックでのふたりのメッセージのやりとり。往復書簡形式で、するすると読めてしまう。
水谷一馬は、約30年ぶりにかつて婚約していた女性、結城未帆子のアカウントを見つけた。結婚式当日、式場に現れないまま行方不明となった花嫁だ。
今やもう責める気持ちはないとなつかしさのまま、彼がメッセージするところから物語は始まる。
ふたりは、大学時代、演劇部の仲間だった。
水谷は脚本演出を手がける天才部長、未帆子は主役を演じる女優で、恋仲になる。が、結婚式当日に何があったのかは明かされないまま、メッセージのやりとりは続いていく。
水谷に婚約者がいたこと。複雑な生い立ち。
未帆子の意外な過去。
手紙形式で、ひとつひとつベールを剥がしていくように秘密が見えてくる。
逆転の手法は、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズ『悪意』を連想した。
誰とでもつながれてしまうSNSの恐ろしさに、読後、最初の方のページに戻って背筋を凍らせつつ確かめずにはいられなかった。
「ルビンの壺」とは、デンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した図形で見方によって「壺」に見えたり「向き合ったふたりの顔」に見えたりする不思議絵。人間の認知能力の特徴、あるいは盲点を衝いた多義図形だそうです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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