2023年初読書は、辻村深月『傲慢と善良』。
浮かび上がる現代社会の生きづらさの根源。圧倒的な支持を集めた恋愛ミステリ
裏表紙の紹介文では、こう謳われている。
ビールの輸入を手がける会社を父から譲り受けた西澤架(かける)39歳は、婚活サイトで知り合った坂庭真美35歳とつきあい始め、2年。ストーカーに追われ逃げてきた真美を匿うように同棲し始め、婚約という流れになった。
けれどある日、真美が突然、姿を消してしまう。
ストーカーに連れ去られたのか?
「第一部」は、必死に真美を探す架目線で語られる。
手掛かりは、彼女の故郷、群馬にあるはずだ。群馬にいた頃に告白されて断った相手だと、真美から聞いていた。
そこで、彼女に見合いの手引きをした小野里という老婦人を訪ね、こう説かれる。
「現代の結婚がうまくいかない理由は、『傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです」
そのフレーズは、架の耳に強く残った。
「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、”自分がない”ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人のなかに存在してしまう。不思議な時代なのだと思います」
架は、以前友人に真美と結婚したい気持ちは何%かと問われ「70%」と答えていた。「ピンとこない」と。恋愛経験が豊富な彼は、単に婚期を逃しただけで自分は婚活サイトにすがるほかの男とは違うと思っているところがあった。だからこそ、小野里の言葉に戦慄する。
「その人が無意識に自分はいくら、何点とつけた点数に見合う相手が来なければ、人は、”ピンとこない”と言います。――私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」
架は、真美が見合いしたという男性2人と会い、職場の友人だった女性と会い、彼女の母親の身勝手な話に憤りつつ、真美の故郷を歩く。だんだんと真美の気持ちに近づいていく。
そして「第二部」真美目線でのストーリーが展開される。
真美はいったい何を思い、どこにいるのだろうか。
解説は、同じく直木賞作家の朝井リョウです。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。