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はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々

『少女』

続けて、湊かなえを読んでいる。

湊かなえはすでに20冊以上読んでいて、読んでいない小説も少なくなってきた。

残るは『夜行観覧車』『境遇』『ブロードキャスト』『ドキュメント』『残照の頂 続・山女日記』など。新作が出るのを楽しみに、コンプリートを目指そう。

 

『少女』は、初期、衝撃のデビュー作と言われる『告白』の翌年2009年に刊行されている。

本田翼主演で、映画化もされた話題作だ。

 

高校2年の桜井由紀は、小学生のとき認知症の祖母に切りつけられ、左手には握力がほぼない。好きだった剣道もやめなければならなかった。

同じ剣道をしていた草野敦子はトップクラスの実力だったが、中学のとき小さなミスで負けたことを学校の裏サイトにかきこまれ、過呼吸となり剣道ができなくなった。

そんなふたりのもとに現れた転校生、紫織は得意げともいえる口調で語った。

親友の死を目撃したことを。

彼女、バスタブの中に倒れてた。カミソリで、手首切って、血がいっぱい流れてて、顔が真っ白で、目の前で起きてることが理解できないのに、なぜか、彼女がそこにいないってことだけが実感できた。

小説は、由紀の語りが「*」、敦子の語りが「**」になっていて、交互にふたりの視点が繰り返されていく。

見たい、死体を。いや、紫織がみたのが死体なら、わたしは死ぬ瞬間を見てみたい。紫織が親友なら、わたしもそれくらい身近な人で。

夏休み、由紀は紫織の優越感に対抗するかのような思いを抱え、小児科病棟へボランティアに通い、昴という生存率7%の手術を受ける小学生男子と出会う。

あたしが自殺してたら、あの子たち、どうしたかな?

かたや自殺を考えたことのある敦子は、死を悟りたいと老人ホームへ。どんくさい35歳のスタッフ高雄孝夫と出会う。そこには、由紀に怪我を負わせた祖母も入居していた。

 

意地を張り合うように連絡を取らず、夏休みを過ごすふたり。由紀と敦子は、いちばん近くにいながらも心を通い合わせることができずにいた。

由紀が敦子をモデルにしてかいた小説『ヨルの綱渡り』。

才能を回収するには、たった一度の跳躍で充分だった。

高校教師、小倉に盗作され、世に出てしまった小説の冒頭だ。

この小説が、ふたりのあいだに壁を作ってしまったのだった。

ふたり以外の登場人物も、複雑につながっていた。

紫織、紫織の親友、高校教師小倉、由紀のボーイフレンド、昴、高雄孝夫……。こんな偶然はないだろうというくらい入り乱れている。そこがまた、おもしろい。

 

そしてふたりは、とても似ていた。「*」「**」マークに気づくまでは、どっちだったかと混乱することも多かった。

プライドが高く、挫折しながらも自分だけは特別だと思わずにはいられない17歳の「少女」たちをリアルに描いた長編ミステリー。

高雄孝夫役は、稲垣吾郎でした。映画、おもしろそう。

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PROFILE

プロフィール
水月

随筆屋。

Webライター。

1962年東京生まれ。

2000年に山梨県北杜市に移住。

2012年から随筆をかき始める。

妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。



『地球の歩き方』北杜・山梨ブログ特派員

 

*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。

 

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