イタリア映画『道』を、観ようということになったのは、夫とふたりで読んだ川村元気の『四月になれば彼女は』に出てきたからだ。
ザンパノという粗野な旅芸人が、助手のピエロとしてジェルソミーナという純粋な少女を買う。ザンパノはジェルソミーナのことを愛しながらも、乱暴に連れ回す。やがて心が弱り、足手まといとなってしまった彼女を捨てて去っていく。数年後、海辺の町でザンパノはかつてジェルソミーナが歌っていたメロディを口ずさむ女と出会う。ジェルソミーナはどこにいるのか? その答えを聞いたザンパノは、海辺でうずくまって嗚咽する。
小説中にはタイトルも監督名も登場しなかったが、とても有名な映画で、主人公の名前「ジェルソミーナ」と聞くだけでわかるのだそうだ。
昔観たという夫がAmazon Prime Videoで探すと、100円でレンタルできた。
イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニの代表作のひとつで、1954年に公開されている。68年前の映画だ。
〈cast〉
ジェルソミーナ【ジュリエッタ・マシーナ】貧しい家庭に育った知的障害の女性。ザンパノの助手ピエロとなる。
ザンパノ【アンソニー・クイン】力自慢の大道芸人。ジェルソミーナを乗せ、ボロボロの車で旅する。
〈story〉
ザンパノは海辺で買ったジェルソミーナを連れ、大道芸の旅をする。旅する先々で女遊びをするザンパノにジェルソミーナは嫌気がさして逃げるが、連れ戻されてしまう。やがて、サーカス団と同行することになり、ジェルソミーナには親しく話す仲間ができるが、ザンパノは喧嘩してばかり。ある日とうとう、大きな事件が起こる。
『四月になれば彼女は』で、藤代の婚約者、弥生が言う。
「ザンパノはジェルソミーナを想って泣いたんじゃないよね」(中略)「自分の手に入らないものが、ひたすらに愛おしかったんだと思う」
藤代は、思う。
愛を終わらせない方法はひとつしかない。それは手に入れないことだ。決して自分のものにならないものしか、永遠に愛することはできない。
そうだろうか、と映画を観てから小説を読み直し、考えた。
ラスト、ザンパノは、ジェルソミーナを、人を、思うように愛せなかった自分に、どうにもならない何かを抱えつつも生きていることに、胸が焼かれるほどに切なくてたまらなく熱い涙が止まらなかったのだろう。
画像はお借りしました。
映画屋さんがかいた小説なので、数々の映画の話が出てきました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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