高知は、”市”も楽しい。
その”市”を舞台に描かれたのは、乃南アサ『岬にて』に収められた「春の香り」である。
〈彼女〉は、久しぶりに生まれ故郷である高知を歩いていた。
母親の七回忌を機に、彼岸を目前にして墓を東京へと移そうとやってきた。
死んだ母に申し訳ないような気持ちもあり、迷いながらの帰郷だった。
ふと足が向き、木曜市へと向かう。
しらす干しばかりを売っている店がある。青汁にする青菜と庭の畑で出来たらしい野菜を売っている店があった。鰹節を売っている店、蒸しパンを売る店に餅菓子を売る店。輝くばかりの真っ赤なトマトばかりを積み上げてある露店があるかと思えば、干物を売る店に続く。焼鳥屋があって、生花店がある。漬物、たい竹輪、豆、コロッケ、土佐ケンピ。彼らは大半が生産者だ。
そこで思いもよらず、20年ぶりに高校時代の親友と再会した。
露店で植木を売る親友は、不登校だという中三の娘を連れていた。すっかり田舎のおばさんになったと思っていた親友に、しかし〈彼女〉は意外な顔をされる。
「ただの主婦らぁてつまらん、一人じゃち生きていかれるようになるって、あんたの口癖やったに」
〈彼女〉は、振り返る。
高校に入ってすぐに父を亡くし、それから母を心配させないよう、安全に、確実にと生きてきた自分の人生を。
さらに、親友は訊く。
「まあ、それはそれとして。で、何か考えゆうが? これから」
「これから?」
「これからの人生よ」
〈彼女〉は、空っぽの自分に気づき、ハッとするのだった。
高知で歩いた、日曜市。
そこに歩く人にも、店を出す人にも、きっと様々なドラマがあるのだろう。
無論、わたしにも、隣りを歩いていた夫にも、土佐指南をしてくれた夫の後輩さんにも。
木曜市ではありませんが、最終日に「日曜市」に行きました。生姜も特産品なんですね。
長ーいリュウキュウは、1本100円で売っていました。もちろん、柚子もいっぱい。安い!
苗もいろいろ。みかん、柚子、レモン。
人気の「いも天」は、一袋300円。
熱々で、ちょっと甘い衣がカリッと揚がっていてほっくほく。
看板屋さん。「なんでも書くぜよ」
JRの忘れ物も販売していました。帽子が多いんだね。
「ひろめ市場」も楽しかった。台湾の夜市を連想しました。
有名店の支店もたくさん入っていました。「明神丸」は鰹のたたきが人気のお店。
塩とタレそれぞれを、ビールセットでシェア。
夫セレクトの蟹味噌や煮込みなど。
手羽先餃子が美味しかった!
「船中八策」は、お酒らしい日本酒ですね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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