ローマ最後の朝。
ゲストハウスから見上げた空には、無数の雲が浮かんでいた。
「うろこ雲?」
「いや。似てるけど、違う」
夫が、ああ、とうなずく。
「これだったのか」
「これ?」
「あの雲、海外の美術館でよく観るような形してない? いや、形っていうより影とか光り方とか」
たしかに、そうだ。見覚えのある、あの雲だった。
「海外の画家の描き方が違うのかと思ってたけど、雲そのものが違ったのか」
瞬時にして、腑に落ちた。
空の雲でさえ、違う。いろいろと違って当たり前なのだ。
顔も体型も髪の色も、言葉も意識も、食事もトイレもお風呂も、バスの乗り方も車の停め方も、なにもかも違った。
それでも、人だということに変わりはなかった。
「チャオ」と笑いかけてくれた、いく人もの顔を思い出す。
4週間。長いと思っていたのだが、あっという間だった。
最終日、アマチュアのクラブチーム「トラステヴェレFC」の試合を観に行きました。
スタジアムで見上げた青空。これは日本でもよく見る秋の雲。
のんびり観戦し、日暮れ前には帰りました。
夕刻、ゲストハウスの窓から見た空。
ラストナイトは、徒歩2分ほどのビストロ「DOC」でディナー。この写真、まるで日本の小料理屋みたいで気に入っています。
水牛のモツァレラとトマトとバジルソースのピンサ。ピザに似た「ピンサ」という料理、ここで初めて知りました。
牛肉とトリフのタルタル。赤ワインを、ふたりで1本空けました。
翌朝、ゲストハウスから見た雲。
この雲です。ほんとうに絵を見ているようでした。
「ラストデイスペシャル」と、笑わない彼女。笑顔の写真を撮らせてくれましたが、最後は下を向いたまま「チャオ」とぶっきらぼうに言うだけでした。
朝食後、すぐに空港へ向かいました。
さよなら、ローマ。チャオ!
☆ローマの旅レポは、これでおしまい。読んでくださって、ありがとうございました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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