我が家の北側には、農業用の水路「堰」が流れている。厳冬期には減っていた水嵩が、最近上がってきた。
「春の水」は、三春の地理の季語。傍題に「春水」「水の春」などがある。
春は降雨や雪解などで渓谷・河川・湖沼などの水嵩が増す。冬涸れのあとだけに、豊かに勢いづき、まぶしさを感じさせる。「水の春」は水の美しい春をたたえていう。淡水のことで、主に景色をいう。海水には使わない。また、飲む水などには使わない。
『俳句歳時記・春』より。
一昨年、長谷川櫂氏の講演会を聞き、そのときにも調べていたが、さらに深く知りたくなった。
ひと吹きの風にまたたき春の水 村沢夏風
情景を、ありありと思い描けた。水に反射する陽の光に、まぶしさを覚える。
日の当たるところ日のいろ春の水 児玉輝代
こちらも、陽の光を詠んでいる。「ところ」「いろ」を平仮名で表記しているところからも、明るさ暖かさなどが伝わってきた。
春の水いまひとまたぎすれば旅 行方克巳
留まることをしない水に、旅へと誘われる。開放的な気持ちになる句だ。
裏返へりては春の水らしくなり 山口昭男
流れては裏返り、裏返っては流れていく。川を連想したが、陽を浴びて流れていく時間の経過のなか、段々に春の水らしくなっていくということか。おもしろい。
また「春の川」も三春の地理の季語。傍題に「春川(はるかは)」「春河(しゅんかう)」「春の江」などがある。
春は雨や雪解などで川の水嵩が増し、山国ではそれが一時に勢いよく流れ出る。野川や町を流れる川は、どことなくのんびりしている。
『俳句歳時記・春』より。
春の川水が水押し流れゆく 古屋秀雄
確かにそうだよな、と納得する句。「水が水押し」に、光や力強さを感じた。
春の川曲がれば道のしたがへる 細谷鳩舎
こちらも、うなずかずにはいられない句。川に沿って道を作る。人の営みを大きなスケールで捕らえていて、春の川を俯瞰しているかのような気持ちになる。
水の美しい春をたたえる「水の春」や、春ならではの開放感に満ちた句を詠んでみたいものだ。

堰沿いの道を散歩しました。右手に見えているのが、わたしの家です。

堰の水嵩。地域の田んぼに水が行き渡るよう、細心の注意を払い管理していると聞きます。

水音を聞き、きらめきを眺めながらの散歩は、気持ちいい。振り向けば南アルプス連峰が見えます。

行く手には、八ヶ岳も。急に上がった気温のせいか、山々は霞んでいました。

小さな段差が、滝のよう。揺らめき流れる様子に、1/fゆらぎを感じます。

空や木々や、様々なものを映して、水は流れていきます。くねくねと曲がったり。

ただただまっすぐ流れたり。

気温の上がった日の、のんびり散歩でした。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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