『青い壺』に引き続き、有吉佐和子のミステリー『悪女について』を開いた。
《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子(とみのこうじきみこ)。
裏表紙の紹介文にあるように、物語は公子の死からスタートした。
27の短編から成る小説集で、27人の男女が、公子についてインタビューに答えている。
冒頭は「その一 早川松夫の話」。公子とは簿記の夜学の同窓生で、初恋の相手だったという彼は、心の綺麗な人だったと振り返る。
「その二 丸井牧子の話」は、小学校時代、隣に住んでいた同級生。
あの人、八百屋の娘だったのよ。八百政っていってね。でも、貰いっ子だったのよ。
牧子は、そんな打ち明け話をしてくれた幼馴染みの死を心から悼んでいた。
しかし「その四 渡瀬義雄の話」で、公子のイメージは一変する。
”最初の夫”だった義雄は、公子に騙され知らないうちに戸籍を入れられていた、結婚なんかしていないのに、いつのまにか子供がふたりもいたのだと言いつのるのだった。
公子は、不動産、宝石、レストラン、今でいうエステサロンなど幅広くビジネスを広げ、一代で巨額の富を得た美貌の女性実業家としてテレビ出演。女性の人気の的となっていた。
レストラン経営のノウハウを教えた愛人、その妻、弁護士、公子が贔屓にしていた服飾デザイナー、親友だという女性、子供がいることを知らずに結婚した二人目の夫、テレビ・プロデューサー、エステサロンの支配人、大学生となった子供たち……。
「ささやくような声でしゃべる」「美しいものが好き」「”愛ですわ””夢みたい”が口癖」「静かに涙を流す」「くるくるとよく働く」「本名は鈴木君子」など共通する証言はあれど、ひとりひとりまったく違う印象で公子を語るのが、おもしろくてたまらない。公子を語りつつも、その人物そのもの、生き方、考え方を覗きこむかのようだった。
もしかすると、こうして普通に暮らしているわたしたちも、友人ひとり知人ひとり家族ひとりにとって、別人格だったりするのかもしれない。公子ほどじゃないにしても。
さて。公子は、なぜ死んだのか。ラストまで、わからない仕掛けになっていた。くれぐれも解説を先に読まないよう、ご注意を。

1978年、『週刊朝日』で連載されていた小説だそうです。テレビ朝日、TBS系列、NHKでそれぞれドラマ化されていました。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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