こんな偶然って、あるのだろうか。
図書館で、「あ、近藤史恵の新刊」とあまり考えずに借りてきた小説は、京都が舞台だった。それも、ひとり歩いた東山近辺のシェアハウスだ。
年明けに読んだ『たまごの旅人』にも、旅する予定だった竹富島が出てきて驚いた。
近藤史恵さん、なんか、シンクロニシティしてるんですけど。
ということで、旅したばかりの京都の町並みを思い起こしつつ、するすると読み進めたのだった。
主人公は、離婚したばかりの45才の女性、眞夏(まなつ)。仕事のつても未来への展望もない。
「少し、わたしと一緒にたゆたってみませんか」
SNSで知り合った京都のシェアハウス&ゲストハウスのオーナー芹さんから、そんなメッセージをもらい、しばらく住まわせてもらいながら働くことにした。
話は、近所の人たちの噂話や、家のことばかり。政治にも社会にもまったく関心がない。知的好奇心も全然ない。なんとかきみを尊敬しようとしていた。でも、難しかった。
夫が、離婚を切り出した理由だ。だから、好きな女性ができたのだと。
高校生の娘、佐那も、すでに夫と新しいパートナーと暮らすことに決めたという。
すべてを否定され、自分だけが置き去りにされ、放り出された。傷は果てしなく深く、ずっと痛み続けている。それでも、生きていかなくてはならない。
シェアハウスには、ピンク髪の舞台俳優、波由(はゆ)、大学院生でアイスランド人のふうちゃん、大学教授の浅香さんの3人がいて、誘ってくれた芹さんは入院中だった。
知らない町。初めてのシェアハウス。外国人の利用が多いゲストハウスの仕事。不安ばかりだったが、日々仕事をこなしていくしかない。
旅行代理店に勤めていた頃の友人、千景との再会。芹さんの思いもよらない申し出。ふうちゃんの家族の来日。
住みながら旅するような京都の町で、眞夏は静かに立ち直っていく。
そんなとき突然、佐那が家出してきた。元夫とケンカしたという。
「わたし、お母さんは、お母さんっていう生き物なんだと思っていた」
佐那は、自分にはそういう生き方はできないと、眞夏に話すのだった。
物語は、家族のために生きてきた女性が、自分のために過ごす時間を通して、自分自身を取り戻していく姿を描いていた。
離婚された男性を描く『山の上の家事学校』と、対になるような小説だった。

カシミアの毛糸の栞は、京都の「恵文社」で、友人たちにと色も模様も違いますがお揃いで購入したものです。岩手県北上市のUTO岩手工場とのコラボで手作りしたものだそうです。1枚100円、東日本大震災復興支援のために寄付されます。

随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
*このサイトの文章および写真を、無断で使用することを禁じます。
管理人が承認するまで画面には反映されません。