スマホから顔を上げると、白い色が揺れた。縦長のブラインドのようなカーテンが微かに揺れるたび、黒い布張りの椅子に陽の光が当たり、その部分だけが白く見える。換気のため窓を空けているのだろう。
透明な、しかし分厚いビニールの向こうで、生前、父を担当していた女性がとても淋しそうに父の死を悼む言葉を述べ、いく枚もの書類を確認するために奥の部屋へ消えた。
ここは銀行で、わたしは亡くなった父の口座を閉める手続きに来ている。
ひとり、ぼんやりと思う。
黒いものでも、白く見えることがあるのだと。
読み始めたばかりの韓国の女流作家ハン・ガンの小説は、タイトルを『すべての、白いものたちの』という。原題は『흰』白い、という意味だそうだ。
第一章である「私」には、白いものを思いつくままに羅列したようなベリーショートストーリーがいくつも並んでいる。
プロローグにある言葉を、いくつか挙げてみよう。
おくるみ うぶき しお こおり つき こめ なみ はくもくれん しろいとり しろくわらう
もともと「白」と認識されていないものも、いくつか含まれているのがおもしろい。ショートストーリーの最初は、「ドア」だった。
自分のなかでは、青の次に好きな色「白」。
銀行の待ち時間に見た白が、そして読み始めたばかりの小説が、そのイメージを変えそうな予感がする。
大寒の頃の山々の記事を『地球の歩き方』にかきました。
ほんとうに真っ白だった八ヶ岳。
☆『地球の歩き方』北杜・山梨特派員ブログ、更新しました。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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