この連作短編集は、ミュージシャン斉藤和義のファンである著者伊坂幸太郎が、斉藤本人から作詞の依頼を受けたのがきっかけでかき始めたストーリーだそうだ。
テーマは、恋愛においての出会い。
作詞はできないけど、さらにラブストーリーは路線が違うけれど、小説ならかくとファンであるが故に答えてしまったという。
それが1話目の「アイネクライネ」だ。
佐藤は、大学時代の友人夫婦宅へ遊びに行く。マドンナ的存在の由美と、その夫となった自由人で変なやつ一真。
独り者の佐藤に、一真が出会い指南をしていたが、由美が突然言う。
「子供を寝かしつけてた時にね、何か、風の音が聞こえてきたんだよ。うるさくはなくて、静かなんだけど、どこかから」
それが、後で考えたらどこかで流れていた音楽だったのかもしれないと、由美は気づいたという。
「結局、出会いってそういうものかなあ、って今、思ったんだ」
そのときはわからない、風のようなもの。
「これが出会いだ、ってその瞬間に感じるんじゃなくて、後でね、思い出して、分かるもの」
「小さく聞こえてくる、夜の音楽みたいに?」
「ライトヘビー」
美容師の美奈子は、常連客、香澄の弟と電話で話すようになる。
「電話切った後で気づいたけど、名前も聞いてなかった」ずっと弟さん、とわたしは呼んでいた。
「何やってんだよ」日高亮一が、ぶーぶーと文句を言う。
「まあ、そこはゆっくり育てていきましょうか」
「ドクメンタ」
妻が、5歳の娘を連れて出て行った。藤間は、一時自暴自棄になったものの変わらず会社に通い、5年に一度の免許更新に行く。
そこには、5年に一度だけ会う、子連れの若い女性がいた。
「ルックスライク」
「高校生」(和人と美緒)、「若い男女」(邦彦と朱美)のストーリーが平行に語られていく。ファミレスでカスハラする男を上手くかわす作戦を核に、展開する。
「メイクアップ」
高校時代いじめを受けた結衣は、いじめ加害者と仕事で再会した。結衣の外見が変わったことで、彼女は気づいていないようだが、同僚が仕返しをしようとけしかける。
「ナハトムジーク」
きれいに、というよりことごとく複線が回収される。
そうそう。と思いだした。伊坂幸太郎は、伏線回収が旨味の作家だった。
置いておいた散り散りばらばらな星(伏線)を、ラストで星座のようにつなげ、俯瞰すれば、ああそうだったのか、こういうかたちになるのかと腑に落ちる。
でも、ちょっと無理矢理っぽいな。偶然が多すぎる。
ここまでつなげなくても、いいのにな、とも思った。
10年ぶりに読み、自分の小説の好みが変わったことを知る。それもまた、新鮮な読書体験である。
「アイネクライネ」をその後、斉藤和義が歌った曲はこちら。
さらに2話目「ライトヘビー」は、シングル「君は僕のなにを好きになったんだろう」
の初回限定版に掲載されていたそうです。
こんにちは。
斉藤和義・・・・・数年前落語(立川談春)の会で隣になった方が和義さんの大、大、大ファンで、それからCDを買って私も好きなアーティストになりました。
私が大好きな曲は『すっと好きだった』『歌うたいのバラッド』かな。
初めて聞いた時、何となく懐かしい響きだったんです。
アイネクライネ・・・・聞いてみました。これもいいなあ~。
伊坂幸太郎は名前しか知らない作家でしたが、面白そうですね。
53歳か、若いな~。
落語で隣になった人、不思議なことがあったんです。
談春さんの羽織の布で作ったお財布を(縞模様)買って(大ファンはそのお財布が必要かどうかではなく売り上げに協力したいそうなんです)それを私に一つくれたんです。
そして小さな名刺をくださってまたびっくり!
何と彼女の旧姓が私の今の名字だったのです。
二人で大盛り上がりして、それからまた秋田の落語の会に来るたびに会っています。
何しろ談春の追っかけだからすごいパワー。
東京生まれの彼女、今日も何処かの寄席に行っているかもしれません。
長々とごめんなさいね。
随筆屋。
Webライター。
1962年東京生まれ。
2000年に山梨県北杜市に移住。
2012年から随筆をかき始める。
妻であり、母であり、主婦であること、ひとりの人であることを大切にし、毎日のなかにある些細な出来事に、様々な方向から光をあて、言葉を紡いでいきたいと思っています。
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